月経前不快気分障害(PMDD)について
【月経前不快気分障害(PMDD)とは?】
多くの女性が月経周期に伴う体調の変化、心の変化を感じ、約70%の女性が月経前症候群(PMS)と診断されるそうです。その中でもとりわけ、精神的症状が重く日常生活にも影響が伴うものを「月経前不快気分障害(PMDD)」と言います。
月経前不快気分障害(PMDD)は約5%の女性に認められ、現代医学では、婦人科のカテゴリーではなく、精神科のカテゴリーに入ります。
PMDDの症状は月経の10日頃前から始まり、月経が始り数日経つと、何もなかったように日常生活を送ることができます。こういったことから、なかなか社会的にも認知されず、ただのパーソナリティー障害と言う位置づけにもなりかねません。
実際に「ただ今月経中」と言うわけにもいかず、急に怒りっぽくなったり、落ち込みやすくなったり、涙もろくなったりなど、「感情の起伏の激しい人」と誤認され、悩んでいる方も多くあります。
【PMDDの症状】
月経の10日前頃より普段とは違う明らかな気分の不調、体調の変化があらわれ、月経がはじまると数日で何もなかったように消えます。特に、気分の不調によって何でもない日常生活が急に滞ったり、感情の起伏の変化から家庭内、職場での対人関係でトラブルになることもしばしばです。
【PMDDのこころの症状】
・極端なイライラ
・緊張する場面でもないのに無意味な緊張感
・興奮し感情の制御ができない
・些細な事での怒り
・頭が混乱し集中力が低下する
・理由のない憂うつ感
・理由のわからないひどい疲労感
・とりとめのない不安
・理不尽な被害妄想
・ネガティブな自己イメージ
・些細な感情変化で涙が止まらない
【PMDDの体の症状】
・十分に寝ても昼も眠い
・浅い眠りを繰り返し寝た気がしない
・頭痛、めまい、たちくらみか起きやすい
・手足の感覚の違和感
・動悸が起こりやすい
・呼吸がしづらく息苦しく感じる
・腹部の痛み
・原因のわからないむくみ
・便秘、下痢、吐き気、嘔吐
・体重の増加
・性欲の減退
【漢方はり治療では】
PMDDは文字通り「月経前不快気分障害」と言う事で、月経前になると症状が発症し始めます。
つまり、月経前になるとホルモンの作用で子宮に血液を多く取られることにより、普段とは違う血液の流れが生じ、血行不良、血流不足などがあると体調不良を起こすのです。
その為、月経の準備に入り、普段とは違う血液の流れ方をし始めた時(月経が始まる10日〜数日前)から症状が出るのです。
血流の不調には、大きく分けて、過多、不足、停滞の3つのパターンがあります。
☆血流過多の場合
血流が多いと、熱量が増すため、手足は冷えますが、基本的には暑がりで薄着の傾向があり、行動的です。
熱量が多いため、興奮、多弁、多動を伴う症状が多くなります。
文字通り「熱くなってしまう!」のです。
「興奮して恫喝してしまう」、「大声で泣いてしまう」、「行き過ぎた嫌がらせをしてしまう」等、発散を伴う外向きの行動が多くなります。
〈治療〉
上半身に熱が溜まると興奮を伴う行動が多くなるため、上半身に溜まった熱をさますツボに鍼をします。胸の熱がなくなると、気分は沈静化し、興奮がおさまり、感情の起伏が穏やかになります。
☆血流不足の場合
血流が不足すると熱量が減るため、低血圧傾向、貧血傾向になり、寒がりでインドア派になります。スタミナもなく体調不良が続くため、心の症状としても、内向きの状態を表し、不安感が強く、マイナス思考で落ち込みやすい、虚無感、無力感が強くなり、人に会いたくなくなります。
〈治療〉
治療は、血流量自体の不足に加え、血行不良が有るので、まずは、消化吸収を良くするツボに鍼をし、お腹が空く状態を目指します。胃腸の働きを良くすることにより、血液自体の生成を強化し、貧血を改善します。さらに血行を良くし、体を温めます。体が温まると、考え方も外向き、前向きになります。
☆血流停滞の場合
血流が停滞すると体の芯に熱がこもり、発散することができず、気分も悶々と内にこもるようになります。「言いたい事が有っても言えない」、「やりたいことが有ってもやれない」という状態になり、すべて内に秘めるようになると、やがて鬱憤がたまり、抑うつ傾向がさらに増します。
中にこもった血流はやがて停滞し、経血がゼリー状に固まる原因にもなります。
〈治療〉
血流を良くするツボや、血液の中の水分を調節するツボに鍼をすることによって、中に固まった血流を流すように治療します。
【まとめ】
現代医学では月経前不快気分障害(PMDD)は精神科のカテゴリーに入っていますが、これは、有効な治療手段が見当たらず、対処療法として精神科の投薬が有効であることから精神科のカテゴリーにあてられていると思われます。
しかし、対処療法で投薬しても根本治療には程遠く、月経のたびに症状が発症するという恐怖は拭い去れません。
漢方はり治療では、根本から改善し、症状を発症しにくい体を目指します。