多くの方が悩まされている頭痛

現在、日本全国で頭痛に悩んでいる患者さんは、約三千万人と推定されています。当院でも頭痛で来院される患者さんは少なくあリません。
頭痛は不思議な症状で、病院に行っても、血液検査やレントゲンなどの画像診断で、脳梗塞、くも膜下出血、脳腫瘍など、脳に起こる重篤な症状が無いかを確認するだけで、ほとんどは何の異常も検出されないため、市販薬と同じような頭痛薬を処方され、経過観察となってしまい、中々根本治療までたどり着く事ができない症状です。さらに最近では頭痛薬の乱用から「薬物乱用頭痛」という新しい種類の頭痛へ移行している方も多くいます。

頭痛の種類

まずは、ご自分がどの頭痛のタイプかを確認しましょう。
頭痛の痛み方は、中々言葉にする事や、表現する事は難しく、症状によっていくつかのタイプが混同している方もみえます。頭痛の治療は、ご自分の症状をうまく治療者に伝えることから始まります。自分の頭痛がどのような原因から起こっているのかを認識できれば予防にもつながります。

片頭痛

片頭痛は15歳以上の8.4%の人が悩まされているそうです。男女比は「1対4」と圧倒的に女性に多く、特に20代~40代に集中しています。遺伝的傾向もあり、母親に片頭痛が有ると子供も片頭痛が起きやすい様です。ストレスやホルモンの変化が原因とされています。
〈痛みの種類〉
こめかみや側頭部に発作的に起こるズキンズキンという拍動性の痛みで、典型的なものでは痛む前にギザギザとした光がみえる事もあります。体を動かすと悪化し、考え事や集中ができないため日常生活にも支障をきたします。頭痛以外の症状として、吐き気、嘔吐を伴い、光や音、においに敏感になります。
〈痛みの持続時間と頻度〉
痛みは数時間で治まる事もありますが、人によって2~3日続く事もあります。頻度は週1~2回の人から月1~2回の人まで幅が有ります。
〈片頭痛が起こるメカニズム〉
ズキズキという拍動性の痛みから血流が関係している事が分かるように、頭は血流量を一定に保つように調整されています。そしてその血流量を調節する物質が「セロトニン」という神経伝達物質です。このセロトニンは精神労働、緊張、不安やストレス、更に、食べ過ぎ、空腹、寝過ぎ、寝不足などの不規則な生活、また、女性の場合には月経や排卵等によって、セロトニンが大量に放出されると頭の血管は収縮し、セロトニンが出尽くすと、その反動で頭の血管は拡張します。

緊張型頭痛

慢性頭痛の中で最も多いのが緊張型頭痛で、成人の23%の人が緊張型頭痛を感じていると言われています。その名の通り筋肉の緊張により起こる頭痛で、ストレスや長時間のデスクワークなどから、肩・首周りの筋肉が過剰に緊張すると、筋肉内の血行が悪くなり乳酸やピルビン酸などの老廃物がたまる事が原因とされています。
〈痛みの種類〉
後頭部、側頭部を中心に重くこわばる痛みがし、ひどい時には頭が金属の輪で締め付ける様に感じます。日常生活ができないほどではなく、むしろ体を動かした方が楽になります。めまいを伴なう事もあります。
〈痛みの持続時間と頻度〉
痛みの持続時間は、誘因となるデスクワークが長時間に及べば頭痛もその時間に応じて悪化します。その為、疲れのたまる午後や、週末に悪化します。
〈痛みのメカニズム〉
長時間の労働やストレスから、肩、首の筋肉が収縮し、後頭部、側頭部への血流が悪くなり、酸素不足となり、乳酸などの老廃物がたまり、締めつけるような痛みを発生させます。

群発頭痛

群発地震のように、いったん始まるとしばらく頭痛の有る日が続きます。誘因は人それぞれですが、季節の変わり目に多く見られます。男女比は7対1と男性に多く、20代~30代の働き盛りの人に多く発症します。
〈痛みの種類〉
片側の目の奥がえぐられる様な激しい痛みに襲われ、じっとしていられず、頭を壁にぶつけて痛みを紛らわせる場合も有ります。痛む側の目の充血や涙、鼻水、鼻づまりを伴います。
〈痛みの持続時間と頻度〉
痛みは15分~数時間続き、頻度は半年~2年に一度、1~2ヶ月間に集中して毎日の様に、主に就寝後や明け方に激しい頭痛が起こります。
〈痛みのメカニズム〉
目の後ろにある内頚動脈の炎症によって発症すると考えられ、一定の時期の決まった時間に発症する事から体内時計の関与が指摘されています。

薬物乱用頭痛

最近特に増えている頭痛に、薬物乱用頭痛が有ります。これは文字通り、頭痛薬を多用する事から起こります。頭が痛くなるとまず市販の頭痛薬を服用します。服用した直後は薬が効いているのですが、切れてくるとまた服用する。これをくり返しているうちに薬物乱用頭痛へ移行していくのです。
〈痛みの種類〉
薬物乱用頭痛の方は、「頭痛になりそう!」という時点で市販の頭痛薬を飲んでいる事が多く、実際には頭痛になっていない事もあります。また、常に頭痛薬を飲んでいるため、実際に頭が痛いのかどうかも分からなくなり、「頭が痛い気がする」という方もいます。
〈痛みの持続時間と頻度〉
頭痛薬の乱用をくり返しているため、毎日頭痛を感じると言う方がほとんどです。薬を飲んではいけないと思いながらも、朝昼と3回は薬を飲む方もいます。
〈痛みのメカニズム〉
頭痛薬を乱用するきっかけとなった頭痛が激しかったため、「飲まないとあの痛みが来たらどうしよう!?」という不安から、ついつい精神的に服薬してしまうのと、市販で売られている薬の成分にエルゴタミン製剤や無水カフェインなど、依存性のある成分が含まれている事も多く、更に依存を招きます。

急性頭痛

特に危険な頭痛です。「くも膜下出血「脳梗塞」「脳溢血」「脳腫瘍」「硬膜下血腫」などにより起こります。特徴は、「今までに経験したことのない様な頭痛」「いきなりバットで殴られたような痛み」「痛みにリズムがなく、徐々に痛みが強くなる」などが特徴です。これらは緊急を要するため詳しくは省略させていただきます。

漢方はり治療では

漢方はり治療でも頭痛の原因は血流の過不足によるものと考えています。頭がズキズキと痛むものは文字通り血流が多すぎて頭が痛くなっている物です。反対に、締め付けるように痛むもの、また、キーンと痛むものは血流不足で筋肉がこわばり、頭が縮まる事で痛くなっていると考えます。

血流過多による頭痛

血流が頭に多く集まってしまう事によって頭痛を引き起こします。頭に血流が多いため、頭を触ると熱く感じます。つまり、のぼせているのです。頭に血流が多くなると頭にある眼や鼻や耳などの感覚器は敏感になるため、光や匂いや音に過敏になります。頭の充血がこめかみで起これば、こめかみには太い血管がありますので血管が拍動しズキズキする痛みが起きます。頭の充血が後頭部・側頭部で起きれば後頭部・側頭部の筋肉が太くこわばり、ドーンとした重い痛みになります。頭の充血が耳の奥にある三半規管に起こると平衡感覚が無くなり、めまい、吐き気、嘔吐を起こします。

血流不足による頭痛

頭の血流が不足する事によって頭痛を引き起こします。頭蓋骨の外で血流不足が起きると頭は締め付けられるよう痛みます。頭蓋骨の中で血流不足が起きると、頭の芯が、かき氷を食べた時のようにキーンと痛みます。陸上の中距離走で全力疾走した時にも頭痛になりますが、これと同じ原理で頭が血流不足から酸欠になり痛むのです。

治療

治療は、血流の回復を中心におこないます。漢方はり治療では、まず患者さんの脈を見て症状を確認しますが、血流過多の方は脈の触れ方も強く、硬く感じます。血流不足の方はその反対に脈が弱く触れにくいです。脈を見て患者さんの状態をおおよそ判断したら、そのあと頭部の熱感や血流不足が、どこの経絡にあるのか判断し、その「熱を取る作用のツボ」、「血流を回復させる作用のあるツボ」にはりとお灸を施術します。

【参考文献】
『頭痛外来へようこそ』清水俊彦著
『頭痛薬をやめて頭痛を治そう』陣内敬文著

清須市の鍼灸院で働く若先生より