つわり
妊娠2~3ヶ月が最悪!
つわりは現代医学でもあまり解明されておらず、原因についても諸説ありますが決定的な説はなく、つわりを改善させる治療法もありません。しかし、鍼灸では古くより研究され独自の治療法で多くの治療効果を上げています。
この「つわり」についてより詳しく考えていきたいと思います。
つわりの症状は早いと妊娠直後から始まり、ひどい場合は妊娠後期まで続きます。
つわりは妊娠した方の8割が何らかの形で感じるとされていますが、中には全く感じないという方もいます。
症状として、妊娠初期に、食欲がなくなったり、胸やけがする、ふだんはあまり食べないようなものが食べたくなる、匂いに敏感になるなどを経験します。ひどくなると、食べたあとは毎回吐く。お腹は空いているのに食べられない、水も飲めない、という状態になり、脱水症状で入院する方もいます。
つわりの種類
吐きつわり
吐き気とおう吐を繰り返すつわりです。匂いや温度差など、少しの刺激でも吐き気を催します。実際に吐いてしまったり、常に胸焼け状態がある、酸っぱいゲップが上がってくるなど、人によって程度は様々です。おう吐を繰り返すため、胃酸で喉がただれ、血が出ることもあります。また喉の違和感やただれが吐き気を刺激し、おう吐につながることもあります。重症化すると脱水状態になるため、病院での点滴が必要になり、さらに悪化すると入院が必要になります。
唾液つわり
唾液つわりは「よだれつわり」と紹介されているものもあります。唾液は、食事中や食事を目の前にした時に出るのが普通ですが、唾液つわりの方は食事とは関係なく唾液が多量に出るつわりで、常に口の中に唾液がたまってしまいます。いつも生唾が口から出ている状態で、ひどくなると唾を飲み込むことが出来ず、無理に飲み込むと吐き気を引き起こします。
食べつわり
空腹時に吐き気を催すつわりです。お腹が空くと胃のムカムカ感、吐き気、酸っぱいゲップが上がってくるなどの症状があるため、常に何か食べている状態になります。小腹が空くと吐き気を催すので食べるのですが、食べ過ぎると吐きつわりの症状が出て、ひどいと実際に吐いてしまいます。食べつわりは胃に物が入っていると落ち着くため、急激な体重増加に気を付けなければいけません。
匂いつわり
すべてのつわりに関わってくるかもしれませんが、特に匂いの刺激で吐き気を誘うものを言います。よくあるのが、「ご飯の炊ける匂い」で気持ち悪くなります。匂いの刺激で気持ち悪くなる為、料理をしている間に気持ち悪くなり、出来上がった頃には気持ち悪くて食べられない場合があります。また、食べ物だけではなく、柔軟剤の匂いやタバコの匂い、そのほか、生活で出る匂いに過敏に反応してしまい吐き気を催します。匂いは暖かいと広がる習性があるため、寒いところや冷えたものは比較的大丈夫なのですが、温かい食べ物、暖かいところでは症状が悪化します。
その他
- 眠気
つわりがひどいと体力も消耗するため、体がマラソンやスイミングをしたような状態になり、疲労回復のため、猛烈な眠気に誘われます。12時間寝ても眠いとか、朝が起きられないなどの症状があらわれます。反対に、十分な睡眠がとれないとつわりの症状も増えます。
- 頭痛
つわりがあると頭痛も増えます。特に普段から頭痛持ちの方は妊娠中は頭痛薬を服薬できないので要注意です。
- 肩こり
肩こりはどこかに体調不良があると増しますし、つわりも一つのストレスになりますので、つわりの症状が激しいと肩こりも増します。また、肩こりが増すとつわりの症状が悪化することがあります。
- ストレス
人は誰でも体調に余裕がないと少しのことでイライラしたり、落ち込んだりします。つわりの症状が激しいときは余計に感情の起伏が激しくなります。また、仕事、家庭環境、体調の変化などでストレスが多い場合にはつわりの症状も悪化します。「ストレス」と「胃」は密接にかかわっていて、ストレスが多いと「気持ち悪さ」を通り越し「胃痛」を感じることもあります。
漢方はり治療での考え方
妊娠や出産に関しては古代中国では多く研究されました。特に子孫繁栄に関しては、歴代の皇帝から命令を受けた医家たちが、その研究成果を数多く文献として残しました。この「つわり」も同様に漢方はり治療の最適応症とも言えるほど著効が見られます。漢方はり治療ではつわりを大まかに「熱」と「寒」に分けて考えます。
熱タイプ
- 胃熱タイプ
妊娠すると母体は子宮に多く血液が集まるのと、高温期と同じような状態になるため体の芯に熱を持つようになります。その熱が胃腸に内攻すると吐き気や嘔吐を引き起こします。普段から胃腸に熱の多い方(過食傾向、胃もたれ、胸焼け、口内炎、唇が荒れるなどの症状がある方)は「妊娠による体の芯の熱」と「胃腸の熱」が重なり、つわりは強く現れます。現代医学的に言うと「胃酸過多傾向」の方に多くみられます。つまり、胃の熱が旺盛になり、胃が機能亢進状態を起こし、消化酵素である胃酸がふだんよりも多く出てしまうのです。胃に熱を持ち胃酸が多く出過ぎるとゲップが多くなります。胃に熱を持つと胃の中でガスが発生しゲップになるのです。また胃に熱を持つので、常に空腹状態になり胃の中に何もなくなると胃酸が胃の粘膜を攻撃し気持ち悪くなります。「食べつわり」の方はこの状態になります。しかし、少しでも食べすぎたりすると激しく嘔吐します。これが「吐きつわり」の症状になります。食べて吐くので吐くときは大量に吐きます。その他、胃の熱が旺盛になると、喉の詰まり感、胸焼け、口が苦く感じる、口臭、便秘、舌の苔が黄色くなる、歯茎が腫れるなどの症状が現れます。
- 肝熱タイプ
普段から暑がり傾向で体に熱の多いタイプの方が妊娠すると、体の熱量が旺盛になり、その熱が胃腸を刺激するため、胃の機能亢進状態を引き起こします。症状は胃熱タイプと同じなのですが、肝熱タイプの方は動機や息切れ、情緒不安なども伴います。特にストレスでつわりが悪化することが多くイライラや不安から症状が悪化します。また反対につわり症状が悪化すると情緒も不安定になり、ヒステリー状態になったり落ち込みがちになったりします。
寒タイプ
- 胃寒タイプ
普段から寒がりで、温かい飲み物を好み、疲れやすく、むくみ傾向で、おなかを横に振ると「チャポチャポ」と水の音がすることもあります。もともと胃腸は丈夫ではありませんので食べたものがすばやく消化吸収されず、いつまでも胃の中に残ってしまいます。普段から時々吐き気や胸やけがあるのですが、妊娠すると症状が悪化し、常に吐き気や胸やけがあります。しかし、もともと少食なので胃熱タイプのように大量に嘔吐することはありません。また胃腸が冷えているため常に水が滞り生唾が多くなります。その為、「唾液つわり」の方が多くなります。
治療
治療も「熱」と「寒」によって使用するつぼが変わります。
熱タイプの方は、どこに熱が滞っているかを問診や触診から診察します。熱の滞っている部分が特定できたら、その滞っている熱を経絡、ツボの作用を使って抜くように鍼をします。症状の激しい方は、この熱の処置をするだけで吐き気が治まる方もいます。
寒タイプの方は、もともと冷え症傾向で血行が悪いので、まず体全体を温めるように経絡とツボの作用を使って鍼をします。体が温まると血行が良くなりますので、むくみが解消され尿が良く出るようになります。体の中の水分バランスが良くなると胃も温まり、吐き気だけではなく、だるさなども良くなります。
鍼は浅くしか刺しません。もちろん痛みも感じません。お灸は少しチクチク感じる程度で気持ち良いと感じる方もいます。もちろんやけどは一切残りません。
気分転換も大切。
つわりの悪化にはストレスや、精神的、心理的な要素が非常に強く、たとえば、二世帯で生活中の女性が妊娠するとつわりが強くなりますし、不妊症でやっと妊娠した場合にはあまりつわりを経験しないなど、妊掃をとりまく環境、妊娠に対する心の持ち方などに左右されます。なぜならストレスは直接胃腸に「熱」をもたらすからです。1日中家に1人でいるよりも友だちを訪ねたり、映画を見たりしてまぎらすほうが気が軽くなります。お勤めをしている人は、そのまま仕事を続けていたほうがかえって気がまぎれてよいという人が少なくないようです。食事の工夫としては、好きなものを好きなときに食べるのが良いです。妊娠した途端に、胎児の栄養を考え、無理に食べようとする人がありますが、つわりのあるころの胎児は非常に小さい(2~3㎝)ので、必要な栄養は母親のからだから吸収します。無理に食べようとしなくてもいいのです。
ご主人さんにもお願いします
つわりは大変つらい症状です。妊娠し新しい命を宿したと言ううれしさも束の間、今度は苦しいつわりの時期が来るのです。
つわりは男性に例えると、ひどい二日酔いの様な状態、ひどい胃腸カゼ、食あたりの様な状態です。そしてそれが数カ月、毎日続くのです。
そんな状態の中で仕事や家事をするのはとても辛いのです。特に、食事の支度が一番つらいのです。二日酔いや胃腸カゼのとき、食事を見ただけで気持ち悪くなった経験は有りませんか?
つわりは決して甘えや怠けている訳ではありません。そして、ご主人の協力があれば我慢できる症状です。
是非お二人で妊娠ライフをエンジョイして下さい!
若先生