痛みは強烈です

三叉神経痛は、顔面の痛みの最も代表的な疾患です。痛みは、耳・目・唇・鼻・頭皮・額・頬・歯・顎と顔の側面に感じます。中には、歯の痛みと間違えられて、健康な歯を抜歯されることもありますし、蓄膿だと思って蓄膿の手術を受けても治らず、結局、三叉神経痛だった事もあるので注意が必要です。三叉神経は、顔面の感覚を脳に伝える第5番目の脳神経で眼神経、上顎神経、下顎神経と3本の枝に分かれています。この3本のうちどれか1本の神経に激烈な神経痛が発生する疾患です。年間の発症率は10万人に対して4.3人で、男性よりやや女性に多い(2:3)といわれています。中年以降に発症することが多く、初発年齢の平均は56歳ぐらいです。
一般に顔面神経痛言われることもありますが、これは正式な名称ではありません。「顔面神経」とは顔面における運動神経のことで、顔が歪んでしまう顔面神経麻痺という疾患はありますが、顔面神経痛という疾患はありません。顔の痛みの場合は三叉神経痛と言います。

症状

顔面の発作的な電撃痛が数秒ないし数十秒間持続します。その後、数秒から1分程度の痛みの休止期があり、再び強い痛みが再発するといった状態を繰り返し、とくに治療しなければ数時間持続します。顔に軽く触れる、会話、食事、歯磨き、洗面、風に当たるなどが誘発因子として知られています。

診断

三叉神経痛には誘発点と言われる痛みを強く感じる部位があるのが特徴的な所見です。 誘発点周辺に触れるだけで痛みは最悪です。誘発点は、上あごの知覚をつかさどる上顎神経(図の②)と下あごの知覚をつかさどる下顎神経領域(図の③)に多く、目の周りの眼神経領域には少ないと報告されています。神経痛のみで 感覚障害や運動麻痺の合併は認められません。50%で6カ月以上、25%で1年以上続く自然 寛解(かんかい)期が認められることが特徴です。

分類

三叉神経痛は本態性、症候性、非定型性に分けて考えられます。
本態性-原因は不明です。第2枝と第3枝に好発し、鼻、唇、口の中に誘発点があるため、洗顔、歯磨き、会話、食事によって痛みが発作的に現れます。痛みは数秒間発作的に続きます。
症候性-最も多いのが帯状疱疹ヘルペスによるものです。これは目周辺の第1枝に起こる事が多いです。そのほか、蓄膿や歯の疾患、三叉神経痛経路にある腫瘍や動脈瘤などによっても起こります。症候性による痛みは発作的ではなく持続的です。
非定形型-鼻や上あごを中心として痛みがおこります。三叉神経痛との違いは誘発点が無く、痛み方が持続的なところです。

漢方はり治療では

漢方医学では気の働きを大変重視します。人体の中で温かい所は血液が十分に巡っているところです。その血液を押し動かすのが気の働きです。特に気の中でも温かい、推進力に優れた気を「陽気」と言います。顔はマイナス20度でも外に出していられる位陽気の多い所です。顔はそれだけ血や陽気が旺盛な所なのです。しかし、いったん血や陽気が不足すると神経を営養できなくなり、痛みとして症状が出てしまうのです。発症年齢が更年期にあたるのは、のぼせが関係します。手足が冷え、顔だけがほてる状態になると、顔を冷やすと気持ち良い状態になります。しかし、冷やし過ぎると神経が縮んでしまい、痛みが出てしまいます。その年齢になると、血液の生産量も減り、血流も悪くなるため、ちょっとした過労やストレスで血液を使い過ぎると、すぐに貧血傾向なります。手足は冷え顔だけがほてる状態がさらに悪化するのです。
また、肩こりがひどくなると、肩首の充血を引き起こし、顔の血流が悪くなります。肩こりを我慢しすぎて慢性頭痛がある人は三叉神経痛にもなりやすいのです。
治療はこういった原因を一つづつ対処しながら、顔への血流を正常に戻すようにハリやお灸をします。どんな神経痛でも患部の血行が良くなれば軽快します。それだけ血流は大切なのです。