産前産後の腱鞘炎
産前産後は腱鞘炎に注意
妊娠後期や出産後に手先の仕事を少ししただけで、指のこわばりや手首の痛みが残る場合があります。
産前産後はホルモンバランスなどの影響から体調、体質が何かと変わる時期に加え、育児やその準備で手先を酷使することも増えてきます。
今回は、産前産後に多い指先や手首のこわばりを起こす腱鞘炎についてまとめてみたいと思います。
腱鞘炎とは
「腱鞘」は、指や手首にある筋肉と骨をつなぎとめる「腱」を束ねる筒、さや(鞘)のようなものです。
筒の中を筋肉から伸びた「腱」が通っているのですが、使い過ぎなどの原因で「腱」と「腱鞘(筒)」がこすれ合うと炎症を起こしてしまい通過障害をお越します。
炎症を起こしてしまうと、お互い腫れて熱を持つ為、指や手首を使うたび、「腱」と「腱鞘」がさらにこすれて痛みを発症するのです。
産前産後に関わらず、一番多いのは、工場などで指先を長時間使う作業をしている方や、ウエイトレスさんのように重いものを片手で運ぶような仕事をしている方に多く、次に、長時間のパソコン作業などでも発症します。
最近では、スマホの使い過ぎで発症している方もチラホラみえます。
産前産後に多いのはなぜ?
産前産後は少し作業をしただけで腱鞘炎になりやすくなります。
「布を1メートル切っただけ!」、「裁縫を少しやっただけ!」と、少し指先の作業をしただけで腱鞘炎になってしまうのです。
確かに産後は、慣れない赤ちゃんの抱っこや授乳、赤ちゃんのおむつ替え、沐浴など身の回りのお世話は沢山あります。
しかし、工場などで働いている人などからみると、作業時間は短かったりもします。
「少ししか使っていないのになぜ?」と思われる方も多いはずです。
現代医学的には「ホルモンバランスの影響ではないか」と説明されますが、はっきりしたことは分かっていません。
漢方医学的には「血虚」が関係すると考えています。
漢方はり治療では
産前の妊娠後期は胎児がどんどん大きくなるため、大量の血液を子宮に送らなければいけません。
また、産後は子宮の修復と、授乳によっ て大量の血液を消耗します。
血液を多く消耗することを漢方では「血虚(けっきょ)」と表現します。
指先の作業は多くの血液を消耗します。
しかし、貧血傾向になると、指先の筋や腱を栄養できなくなるのです。
産後は24時間休みなしのお世話と授乳で貧血傾向にもなります。
また、もともと貧血傾向の方はさらに貧血を悪化させ、「血虚」にもなりやすいのです。
貧血の改善策として病院では「鉄剤」を処方される事も多いのですが、なかなか改善されない場合があります。
そればかりか、「鉄剤」の処方で食欲不振になる事も有ります。
漢方はり治療では体の疲れを取り、血流を良くする事を重視します。
疲れは余分な血液を消耗しますし、内臓機能も低下し、消化不良等から新たな血液を生産する事もできません。
余分な疲れを取る事で、質の良い睡眠が得られる様に体調を整えます。
産前産後の手のこわばりは、体調を整え、貧血を改善しないとなかなか治って行かないのです。