認知症を知ろう

認知症は誰にでも起こりうる症状です。
そして誰もが不安に感じている症状です。
中でも一番不安に感じているのは認知症になっているご本人です。
認知症の初期ではご本人の思考もしっかりしている部分があり、「最近物が思い出せない!」「自分は認知症ではないのか?」「この先どうなるのだろう?」と言う不安から、苛立ちや怒りと言う感情だけが目立ってしまいます。
認知症を理解し、認知症の方がどのように感じているかを理解することで、周りの方の参考になればと思います。

認知症と物忘れの境界

誰でも年を取ると物忘れは多くなります。
しかし、物忘れと認知症には境界線があります。
例えば、饅頭を戸棚にしまい忘れ、戸棚を開けて饅頭を見た時、「あら、ココにしまったのを忘れてた!」と言うのは「物忘れ」です。
一方「誰がこんなところに饅頭をしまったの?」と言うのが認知症です。
さらに、認知症の方は記憶は無くなっても感情は残ります。
そのため、「饅頭を盗られたくない」と言う気持ちが働くと、洗濯機の中に隠したり、洋服ダンスの中に隠したりします。
しかし、認知症の方は、隠したこと自体を忘れてしまいます。
認知症を理解しよう
認知症の代表的な症状は「記憶の障害」ですが、その他にも感情の起伏が激しくなったり、徘徊、生活リズムの変化、不摂生など、理解できない行動に周りの方は困惑しがちです。
ここでは、認知症の方の気持ちを理解することで、周りの方もどのように接したら良いかを考えてみたいと思います。

感情は残る

認知症の方は「記憶」は短時間で忘れてしまいますが、「感情」は強く残ります。
そのため、「どうしてそんな事するの!」「いい加減にして!」と嫌な気持ちにさせられると、その感情の記憶の方が強く残ります。
そのため、周囲の人たちとの関係性も悪化し、コミュニケーション不足から認知症をさらに悪化させます。
同じことを聞かれても、失敗を繰り返しても感情的にならず、時には上手な「嘘」をつけるようになると楽ですよ~。

記憶の法則

認知症の方は新しい記憶から失われます。
そのため、「今日は何曜日?」と聞いた数分後に「今日は何曜日?」と何度も同じことを聞いてきます。
認知症の方は聞いた事を忘れてしまうので「さっきも同じ事言いましたよ!」と行っても意味がありません。
感情的になると、自分に対する否定的なイメージだけが残り逆効果です。
根気に答えてあげる事が今後のためにもベストです。

症状は増減する

認知症の症状は日によって、時間帯によって増減します。
特に初期の認知症はしっかりしている部分とおかしな部 分が入り混じり、家族は「最近冗談を言う様になった」 と誤解するほどです。
さっきまで真面目な話をしていた かと思うと、何度も同じことを聞いたりしますが、また 次の日は一日しっかりしたりします。
その為、家族は混 乱しがちですが、認知症はこうやって進行すると考えて 下さい。

家族にはわがままが強くなる

認知症になっていても大人です。
他人や近所の方に対しては認知症を感じさせないほど流暢に会話ができます。
その為、近所の方は認知症になっている事に気が付きません。
いくら説明しても「しっかりされているじゃない!」と言われます。
反対に、親しい間柄の人にはわがままになり、子供の様に無理な要求もしてきます。
そのため、家族の方は「意地悪をされている!」と感じてしまいます。
認知症の方は、可能不可能の判断基準があいまいになり、親しい間柄の人には無理な要求が多くなるのです。

不利な事は認めない

認知症の方は、自分にとって不利な事はなかなか認めません。
排便に失敗しても「俺じゃない!」とか、部屋を散らかしても、鍋が火にかけっぱなしでも「自分じゃない!」と言い張ります。
良い訳も流暢にしますが、長く聞いていると矛盾点が出てきます。
初期の認知症の方は自分のせいだと気づいている場合もありますが、認知症になっている事を悟られたくないので、その場を切り抜けようとします。
とがめても、本当に覚えていない事もあります。
強く追及するとまた否定的な感情だけが記憶に残りさらに関係を悪化させます。

すぐに感情的になる

認知症になると不安や焦り、体力の低下から余裕がなくなり、気が短くなる傾向にあります。
その為、周囲の方が強い言い方をすると、認知症の方からはさらに強い反応が返ってきます。
「お風呂入った?」と強い口調で聞くと、否定的になり、意地でも入ろうとしません。
「お風呂入ってね~」と穏やかに言うと少なくても否定的にはなりません。
ただ、いくら穏やかに言っても思う様にはいきません。

こだわる

認知症の方は一つの事が頭から離れず、執着しこだわる傾向があります。
数年乗っていない自転車に乗ろうとしたり、引き留めても何度でも乗ろうとしてあきらめません。
夜中に買い物に出かけようとするのを止めても、すきを見て出かけようとします。
こだわる事自体を止めようとすると、認知症の方にとっては否定されたと同じ事です。
命に関わる危険がないようであればしばらく付き合う事も大切です。
目的が達成できれば納得できます。
また、なぜこだわるのか、こだわる物にまつわる話を聞き出す事も効果的です。
しかし、徘徊や、近所迷惑、危険が伴うものなどは興味の有るもので気をそらしたり、近所の方や第三者に登場してもらいましょう。

介護をもっと楽に

人間の脳は生まれてから発達し、歳をとると退化していきます。
退化の過程は、赤ちゃんから成人へ発達するのと逆に経過します。
認知症の初期は学童、進行すると幼児になると言えます。
赤ちゃんのことを知らないでいきなり子育てが始まると、パニックの連続ですが、2人目、3人目では余裕が生まれます。
認知症を知ることで余裕が出来るのです。
認知症の方は理不尽な行動を起こしたりします。
雨の日に傘も差さずに外出しようとしたり、寒くても服を着ない、過食をしたり、食べなかったり…。
子どもと一緒で、大抵は大事に至りません。
反対に、行動を正そうとすると大人の部分が出て関係は悪化します。
割り切って見守ることも必要です。
子どもと接するときと同じように、上手な「嘘」も使い分けると楽ですね。
また、子育てと一緒で、いつも二人っきりでは子供も楽しく ありません。
保育園に預けるときは嫌がりますが、行けば楽し いはずです。
デイサービス、ショートステイを上手に利用し、同 じ立場のお友達を作り、情報交換しながら介護者が孤立しないよ うにしましょう。
認知症は誰にでも起こりうる症状です。
もし自分が認知症にな った時、どう考え、どう接して欲しいかを想像しながら接するこ とで良い関係が築けたら良いですね。

清須市の鍼灸院で働く若先生より