パニック障害について
【はじめに】
最近ジャニーズのアイドルが「パニック障害」を理由に活動を休止するなど「パニック障害」という言葉をよく耳にするようになりました。
また、こういった精神神経疾患の病名、症状を公表して活動を休止する芸能人も増え、精神神経疾患を一つの病気として考えなければいけない世の中にもなってきました。
実際に心療内科、精神科、心クリニックなどという病院が数多く開業し、今まで「内科などの検査などでは異常はないから…」と漠然と悩んでいた患者さんも「心の病気なんだ」と気づき、治療という選択肢を選びやすくなったとも言えます。
これは一般の方でも「こういった症状は誰にでも起こりうる、珍しくない症状なんだ」という意識を植え付ける機会になったと思います。 治療院でもこのような患者さんは増え、「内傷なければ外邪入らず」「病は精気の虚より起こる」と考える漢方はり治療として、十分効果を発揮できると考えています。
【パニック障害とは】
《概要》
パニック障害とは、「パニック発作」「予期不安」「広場恐怖」を三大症状とする病気です。100人におよそ1人が発症するといわれています。 パニック発作では、突然訪れる恐怖や強い不安によって、動悸やめまい、呼吸困難などが現れます。これらの症状により、患者さんは「自分は死んでしまうかもしれない」と思うほどの恐怖を感じることがあります。しかし、症状はすぐに消失し、検査でも異常はみられません。パニック発作を繰り返すと、また発作を起こすのではないかと心配する(予期不安)ようになり、通常の社会生活を送ることがままならなくなることがあります。 また、経過中にはうつ病を合併する恐れがあり、治療に難渋することがあるため、早期に診断されて治療につなげることが重要です。
《原因》
パニック障害のメカニズムや原因は完全には明らかにされていませんが、人が危険な場面に遭遇したときにはたらく神経機能が異常をきたすとパニック障害が生じると考えられています。 パニック発作の引き金になるものとしては、過労、睡眠不足、ストレス、風邪などがあります。また、家族歴があると発症リスクが高まることが知られています。 《症状》 パニック障害は、三大症状である「パニック発作」「予期不安」「広場恐怖」と、それに引き続くうつ症状が特徴的です。
・パニック発作
パニック発作は、何の前触れもなく突然生じて、激しい動悸、息苦しさ、めまいなどの症状を起こす発作です。パニック発作による症状は「自分は死んでしまうのではないか」と思うほどであり、患者さんが病院に駆け込むことも少なくありません。
・予期不安
パニック発作を繰り返すことで、また発作を起こすのではないかと心配することを予期不安といいます。パニック発作は時間と共に治まりますが、一度治まった後もしばらく時間をあけて繰り返します。すると、パニック発作を起こしていないときであっても、また同じ発作が生じるのではないかという心配を伴うようになります。
・広場恐怖
いつ生じるかわからない発作に備えて、助けを得られない状況などを避けようとすることを広場恐怖といいます。パニック発作を生じると、自分一人の力ではどうしようもなくなってしまい、誰かの助けを得たいと思うようになります。その結果、いつ生じるかわからない発作に備えて、助けを得られない状況や、発作から逃げられない状況を避けるようになります。
《うつ症状》
行動制限によって、会議や出張、買い物などの状況を避けるようになると、日常生活を送ることがままならなくなります。その結果、生活の質が著しく損なわれてうつ症状がみられることがあります。 《検査・診断》 パニック障害では、問診において症状を評価することから診断をつけていきます。また、激しい動悸や息苦しさといった症状は、パニック発作によるもののみではなく、甲状腺機能亢進症などの身体的な病気が原因で生じることがあります。身体的な病気を否定するために、血液検査、心電図、レントゲン写真、心エコーなどが考慮されます。 (「メディカルノート」より)
以上が典型的なパニック障害の概要ですが、実際にはこれらの症状が単体で発症し、その場で消えていき、「先生こんなことがありました」など、問診の中で「軽いパニック発作」があったのだなと気づくときもあります。
例)
・会社に遅れそうで電車に飛び乗ったら動悸がしてきて猛烈な不安感に襲われて次の駅で電車から降りた。
・レジで並んでいたら従に息苦しくなってフワフワしてきたから買い物籠をその場に於いて店から立ち去った
・上司からストレスのかかることを言われて吐き気があって以来、常に喉に何か引っかかった感じがしている。
これらはパニック障害特有の「また同じ症状になったらどうしよう」という「予期不安」まで至っていないケースです。 また、患者さんは特別なストレスや悩みのない方でも発症することがあります。特別なストレスや悩みがない方でも、一度猛烈なパニック発作を経験したり、度重なるパニック発作を経験すると「予期不安」「広場恐怖」へと移行し、「パニック障害」へと移行してしまいます。
【漢方はり治療からのアプローチ】
《体表観察と愁訴》
治療院に見えるパニック障害を主訴として来院される患者さん、また、パニック障害と思しき患者さんを基に考察していきたいと思います。 症状として動悸、息切れ、めまいなどがありますので、肩、首、胸には熱感があります。熱の程度により、またいつパニック発作が起きてもおかしくない状態か、落ち着いている状態かが判断できます。 当然、熱の停滞が慢性化すると凝りの自覚もひどくなります。熱性の凝りが慢性化するとパニック発作を起こしやすいとも言えます。 肩甲間部の圧痛、身柱から至陽にかけて督脈上の圧痛が見られます。 めまいをともなうと、後頭部、天中、風池、完骨、翳風の辺りには熱感、熱湿、浮腫などを触れます。慢性頭痛の方にもよく見られます。耳閉感、低温性難聴、感音性難聴などを訴える場合もあります。 心下部は詰まります。中脘の動悸が強い場合には逆流性胃炎も伴います。 手足は、肩、首、胸に熱感が多いほど冷えています。
【血虚と貧血について】
以前から血虚と貧血はかなり関係があるなと感じていました。「肝の色は青」と言う様に、血虚症状が多くなればなるほど青白く、現代医学で言う貧血用症状を現します。治療院でも血虚のひどい患者さんには、「病院や血液検査などで貧血と指摘されたことはない?」と聞いたりもしています。半分くらいの方は「ある」と答えますが、血虚症状が激しい方でも貧血を指摘されたことはないと答える方もいます。 そこで、現代医学からみた貧血と精神神経疾患の関係を書いた本はないかと探していたところ、『うつ・パニックは「鉄」不足が原因だった』藤川徳美著という本を見つけました。 ここには、以前からおぼろげに思っていたことが、しっかりと検査数値と共に説明されていました。 この本を書いた先生も、精神神経疾患の患者に貧血の人が多いことに気が付いたそうです。 そもそも、産前産後にうつが多いということは、貧血が関わっていることは明らかだとは思うのですが…
(例)
・血液検査をする際、ヘモグロビン値だけ計っても意味はなく、フェリチン値を計らないと貧血かどうかの判断は出来ない。
・集中力低下、神経過敏、些細なことが気になる、気分が落ち込む、やる気が出ない、イライラする、息苦しくなる、動悸がする、めまいふらつきがある、立ちくらみ、耳鳴り、片頭痛、喉の違和感、出血(アザ)、コラーゲン劣化(肌・髪・爪・シミ)、ニキビ、肌荒れ、不妊、レストレッグス症候群(ムズムズ足症候群)、やたらと氷を食べる、倦怠感がある、目覚めが悪い、冷え症などは、鉄不足の症状であり、うつ・パニック障害の愁訴とも重なる。
・中学生の不登校、引きこもり、うつと、生理と鉄の関係。
・現在主流なのは脳内の神経伝達物質(セロトニン・ドーパミン・ノルアドレナリン)に作用させる服薬が主であるが、そもそも鉄が不足すると神経伝達物質を作れない。
頭を使えば頭に血が行き血を消耗します。ネガティブなことを考えれば緊張して心臓がドキドキします。肝の持つ潔癖な性格は、「かくあるべきだ!」「○○でなければならない!」ということで、言い方を変えれば「強迫観念」にもつながります。これは、度を過ぎれば、緊張状態を生み、心臓をドキドキさせることによってまた血虚なります。 特別なストレスがないのに、急にパニック発作を起こす人に、このような人が多いと思います。パニック発作を起こしたことによって、「またなったらどうしよう」と、予期不安につながり、頭で考えることによって血を消耗し、根深いパニック障害へと移行します。 人は貧血になればなるほど心臓と脳を守ろうとします。手足は無くても生きていけますが、心臓と脳はないと生きてはいけません。心臓と脳に血液が集まると、脳は過活動を起こし、さらに物事を考えようとします。心臓に血液が集まると過活動を起こし、動悸や高血圧を引き起こします。
【おわりに】
パニック障害の原因は色々な事が書かれていますが、どれを読んでもあまりピンと来るものがありません。親のせいだとか、心配症のせいだとか… 漢方はり治療的には、ほぼ体調だと思っています。疲れている時に精神的ストレスが重なったりと、そう言った意味では、不安神経症全般が体調という事も言えます。 漢方的に見れば、心と体はつながっていますので五臓が疲れると内傷も疲れます。 患者さんにも、「体調ですよ」というと、すごく納得していただけます。 精神病だとピンとこないという思いと、とりたてて、本当にストレスなく発症する方もみえるからです。ただ、一旦なってしまうとパニック障害がストレスになります。