脱毛症の分類

■単発型 頭髪が円形に2~3ヶ所単発的に抜けます。一般的に一番多い症状と云えます。年令、性別関係なく発症するようです。自然治癒するものも多いですが、まれに多発型に移行することもあります。
■多発型・続発型 頭髪が多発的(数ヶ所)に抜け、繰り返しやすいのも特徴です。
■全頭脱毛症 数ヶ所の脱毛部位がつながり、頭髪が全部抜けてしまう症状です。
■汎発性脱毛症 頭髪が全部抜けて、まゆ毛・まつ毛・わき毛・陰毛・その他全身の毛が抜けてしまいます。脱毛症の中では1番重い症状といわれています。

漢方医学では

西洋医学では「自律神経障害」、「内分泌異常」、「毛周期障害」、「自己免疫疾患」、「感染アレルギー」等が原因であると考えられ、「自己免疫疾患」と いう説が有力だそうです。
漢方医学では髪の毛の事を「血余」とも表現し、文字通り、血の作用の余りが髪になるとされ、血が充実していないと髪の毛を上手く栄養できず抜け落ちてしまうと考えています。
血は生命活動を支えるエネルギーで、筋肉の運動から、臓腑の栄養、思考や感情などの情思まで、全てをつかさどります。この血が消耗し過ぎた時、髪の毛を栄養できず抜け落ちてしまいます。
血が消耗される原因は様々で、ただ単純に過度の肉体労働でも血は消耗されます。しかし、肉体労働での血の不足では脱毛は起こりません。いくら徹夜続きでも、遣り甲斐のある仕事をし、精神的に充実している時は脱毛は起こらないのです。ただ一般的に、身体が疲れてくると精神的に余裕がなくなるため、些細なことから精神的疲労を伴うことは十分にあります。精神の疲労が伴った時に脱毛は起こります。
精神的疲労の身体に与える影響
精神的疲労の身体に与える影響の特徴といえば先ず、「動悸」や「のぼせ」が考えられますが、ここでは「のぼせ」について考えて行きます。
西洋医学ではのぼせをあまり重視しませんが、漢方医学では「のぼせ」などの「寒」「熱」の偏在を大変重視します。のぼせていると言う事は、それだけ頭が熱い状態になります。体の中で熱い物は「血」しかありませんので、そこに血が停滞していると言う事です。血は多く使われたところの不足を補うために集まる性質があります。肉体疲労では筋肉に血は集まりますが、精神疲労では「思考力」を発揮する、頭に血が集まります。頭に血が停滞すると、その逆に、胸から下、腹部、手足は、血の不足から循環が悪くなり、冷える様になります。
激怒したりするとのぼせの状態が急激に起きます。目は血走り、青筋が立って、顔は真っ赤になります。「昨日激昂し、一晩で髪の毛が抜けた」という場合は、これに当たります。急激に頭に血が上ったため、毛根に熱を持ち抜け落ちるのです。しかしこのような場合は、急性であり、根の浅いものなので、そのままにしておいても自然に髪が生えてくることがほとんどです。
それとは反対に慢性的な精神疲労から多発型円形脱毛症、続発型円形脱毛症を発症してしまう場合があります。
精神的疲労が慢性化してくると、あれこれと考え込むことが多くなり、「思考」により血を消耗し、慢性的な血不足になります。慢性的な血不足になると、熱を十分蓄えた血そのものが少なくなるので、のぼせはあるものの、熱量の少ないのぼせになり、頭皮が浮いて、押すとブヨブヨする様になります。頭皮がブヨブヨと浮くのは、頭皮と頭蓋骨の間に水が停滞するからです。(決して脳には問題はありません)血の不足から、血流力も悪くなり、水分もうまく運べなくなるからです。
精神的疲労が慢性化してくると、いつもは気にならない些細なことも気になり、さらに考え事がつきないため、「思考力」を消耗してしまい、のぼせ、貧血を助長してしまいます。
ここまで来ると、色々な症状が出てきます。多発性、続発性円形脱毛症の約25%の患者さんの爪には小さな凹みや横スジなどの変化みられるそうです。爪の横スジは一般的に、強い疲労、貧血など身体に不調が起きたときに出やすいと言われています。さらに爪が凹みスプーンのような形に変形しているときは、重度の貧血になっている事を意味します。
頭部に血の気を摂られて貧血傾向にありますので、内臓もあまり働かなくなり、食欲が無くなります。しかし、内臓が悪くて食欲が無いのではなく、内臓を働かせるエネルギー不足、つまり血不足の食欲不振ですので、食べれば食べれます。また、内臓の働きが悪いため便秘傾向になりますが、血不足で、冷え傾向の便秘ですので、出ると軟便になります。体質的に血不足がありますので、大人になっても冬になると、しもやけが出来やすい方が多いです。当然の事ながら不眠傾向にあります。

治療

治療は血の製造を活発にし、血そのものの量を増やし、尚且つ、血の流れを良くするようなツボを選び鍼をします。血は胃腸で飲食物を消化、吸収し製造されますので、胃腸の調子を整えるツボにも鍼をします。頭部には溜まった熱を抜くためにチクチクと感じる程度の鍼をします。また、状態により、チクチクと感じる程度のお灸をする場合もあります。この場合やけどなどの痕は一切残りません。

ストレスって何?

先ほどから「精神的疲労」と書きましたが、これは今風に言ってしまうと「ストレス」です。しかし、円形脱毛症の患者さんは皆さんこの「ストレス」に対する認識が薄いように感じます。と言うのも、「何かストレスはありますか?」と聞くと、決まって「ありません」と答えるからです。
肩こりや神経性胃炎などの、いわゆる「精神的疲労」が根本にある患者さんは、自分から「ストレスのせいです」と言ってくるものなのですが、円形脱毛症でみえる患者さんでは、そう言ったことはありません。これは円形脱毛症にかかりやすい性格も関係していると思われます。
漢方医学では性格と体質はイコールと考えています。その性格と体質を含めて「素因」と読んでいます。この「素因」を5つに分類して当てはめると、円形脱毛症が発症する方は「肝木」に当てはまる方がほとんどではないかと思います。
肝木素因の方は、「かくあるべきだ」「~でなければならない」と、潔癖で、完璧主義な性格です。「出来て当然」「やって当然」と普通の人はやらないことまで律儀にやろうとしてしまうため、とりこし苦労も多くなります。
例えば、スーパーへ買い物に行き会計を済まし、使ったカゴを普通、所定の位置へ戻します。しかし肝木素因の方は、他の人が置きっぱなしにしたカゴまで律儀に所定の位置まで戻します。
このように、肝木素因の方は、自分の知らないところで気を使っているのですが、元来「気を使って当然」と言う性格があるため、自分自身に対するストレスには鈍感になるようです。
ストレスとは感じていないが、「最近飲酒量が増えた」などと言うときは、知らず知らずのうちにストレスの発散を自分でしているものと思われます。これと同様に、やたらと食欲がわいてきたりするのもストレス発散を身体が要求しているのでしょう。