胸郭出口症候群ってなに?

胸郭出口とは、鎖骨と第一肋骨の間で、頚椎(首の骨)から出ている腕や指を動かす神経が、鎖骨の下辺りを通り、腕神経叢(わんしんけいそう)という腕や手指に行く末梢神経の束を作ります。この腕神経叢腕が何らかの原因により圧迫され通過障害を起こすと症状が発症します。また、同様に、鎖骨の下を通る、鎖骨下動脈や鎖骨下静脈という血管が圧迫されても腕や手指に行く血流が阻害されるため似たような症状が発症します。首から出た神経や心臓から続く血管が、鎖骨と第一肋骨の間の胸郭を出た所で圧迫されるので、この名称が付けられました。
首や肩や腕を特定の位置にもっていくと、腕や手指にしびれやだるさ、痛みなどが現れます。首が長く、なで肩の女性に多く、20代にピークがあると言われています。

原因は何?

鎖骨周辺では、太い神経や、太い血管がいくつも重なりあううえ、腕や首などの可動閾の大きな関節もあり、狭い範囲の中で筋肉が幾重にも重なり合うため、神経や血管を圧迫する原因がいくつかあり、どこかで通過障害を起こすと症状を引き起こしてしまいます。また、胸郭出口症候群を細かく分けると3種類ほどに分類されます。

斜角筋症候群

前斜角筋(ぜんしゃかくきん)と中斜角筋(ちゅうしゃかくきん)という頚椎から肋骨に繋がり肋骨を上方に引く作用を持つ筋肉が圧迫されると、ひじや手の小指、薬指にしびれ、知覚異常を起こします。原因には先天的な異常等も含まれますが、頚肋と呼ばれる肋骨様の骨の先天的な肥大や、体の疲労や姿勢の変化、筋肉の肥大や痙攀などで血管や神経を圧迫することもあります。なで肩の女性に多い病気で、長く肩を下げていると症状が悪化します。

肋鎖(ろくさ)症候群

鎖骨と第1肋骨の間で、血管や神経が圧迫された時におこります。指先に軽い知覚障害と、血管の圧迫により血行不良から片方の指先だけが冷たくなり、ひどい場合には指先が薄紫色になります(チアノーゼ)。疲労・姿勢などの変化で、肩が下がると発病しやすいようです。胸を張って肩を後下方に下げると手首の血管の拍動が触れなくなります。

過外転症候群

腕を挙げ、胸を張った時、胸にある小胸筋が緊張して神経や血管が圧迫されるとを通る時に圧迫されると、胸から肩、ひじ、小指、薬指にしびれや知覚異常を感じます。

検査と診断

胸郭出口症候群は、症状や病歴からおおよその推測はできますが、誘発テストをする事により、どこの部分の損傷かが確かになります。誘発テストは3種類ほどあります。

モーレイテスト

しびれのある側の、のどぼとけの外側にある鎖骨の上のくぼみを指で圧迫すると痛みやしびれが誘発されます。これは斜角筋の通過障害がある事を表します。

アドソンテスト

首を反対に倒して反らせると手首で動脈の脈拍が触れなくなります。これは斜角筋の緊張により血管を圧迫し腕への血行不良を起していることを表します。

ライトテスト

肩をあげて後ろへ反らせると手首で動脈の脈拍が触れなくなります。これは小胸筋の過度の緊張により、血管を圧迫し血行不良を起こしている事を表します。

漢方はり治療

漢方はり治療では、まず上半身を中心とした筋肉の状態だけではなく、全身の状態を診ます。単に「筋肉の緊張」と言っても原因は様々で、のぼせなどがあり上半身の筋肉が充血している場合には上半身に熱を持ち、下半身は冷えていますので、まずのぼせを取る治療をします。全身の筋肉が筋張っていたら全身の筋肉をほぐす治療をします。胃もたれなどの内科を中心とした不調がある場合には、まず内科を整えるような治療をします。この時点で症状が治まっている方も少なくありません。全身の状態を整えた後、胸、肩、手など、どの経絡に痛みが集中しているかを診て、その経絡の筋の緊張を取るツボに鍼をします。この場合のハリは経絡の刺激程度のハリですので、痛みはほとんど感じません。