スポーツと漢方はり治療
スポーツと漢方はり治療
最近ではスポーツと鍼灸治療はテレビや雑誌でも多く取り上げられ、プロスポーツ選手も怪我の治療や体調管理に鍼灸院を訪れている事が取り上げられています。
鍼灸院に通ったことのある方は皆さんご存じのとおり、もともと鍼灸治療は整形外科分野における怪我の治療は得意で、患者さんの多くは腰痛、肩痛、膝痛などの各種筋肉疾患や、関節痛の患者さんがほとんどです。さらに、鍼灸で治療できないのは、虫歯、切り傷、骨折くらいで、そのほか、内科疾患から婦人科疾患まで幅広く対応できます。
今回は、「スポーツと漢方はり治療」に話題を絞り解説したいと思います。
「障害」と「怪我」の違い
「障害」は、スポーツや運動などで継続的に同じ部位を使い過ぎることによって起こる症状です。長期的に同じ運動を続けることにより、体の一部に負担がかかり症状が発生します。これらは成人だけでなく、成長期の子供にも起こり、主に使いすぎ(オーバーユーズ)が原因で発生します。損傷部位としては、腱、靭帯、関節軟骨などの関節周囲の炎症、また、骨に繰り返しの負荷が加わり、ひびや骨折を起こす場合もあります。
「怪我」は、転倒や衝突などとっさの行動で起こる症状で、スポーツに限らず、日常生活でも十分起こる可能性の有る怪我です。
「障害」と「怪我」は、発生の仕方が違うので、治療法や経過も違い、一概には説明できませんが、ここでは代表的な症状をいくつか書き出してみたいと思います。
代表的な症状
疲労骨折
マラソンや、サッカー、野球、テニスなど、疲労骨折で戦線を離脱する有名選手は数多くいます。骨折と言うと、転倒や衝突など特別な条件で起こる事を想像しますが、疲労骨折は同じ動作を繰り返す事により、骨の一定部位だけに負担がかかり発症する骨折です。特に、大事な試合前などに短期間に集中したトレーニングを行う事により発症します。中足骨(足の甲)、脛骨(すね)、肋骨(あばら骨)に好発します。
〈治療〉
ほとんどの場合、整形外科では固定やギブスなどは行わず、アイシングと安静が基本 です。漢方はり治療では患部の炎症を抑え、患部の熱を冷まし、患部周辺の筋肉を弛 めることにより治癒を早める事が期待できます。
関節痛
・肩関節
スポーツ傷害の中で代表的な障害に「野球肩」があります。良くないフォームで投球を続けたり、ウォーミングアップができていない状態でいきなり投げたり、連戦や連投で疲労が蓄積し、肩関節の筋、腱、滑液包などに何らかの負担がかかり炎症を起こします。最初はスポーツをしている時だけ痛みが有りますが、悪化すると安静時にも痛みを感じます。野球だドミントン肩などともいわれ、損傷を受ける箇所は大体似通っています。水かき、サーブ、スマッシュ、スイング、アタックなど、一定動作を繰り返す事により肩関節に負担がかかり炎症を引き起こします。そのほか、ひじ関節を痛める野球肘、テニス肘、ゴルフ肘、また、膝関節を痛めるジャンパー膝、サッカー膝なども同じです。ある一定動作を行う事により、関節内の筋、靱帯、腱、滑液包、などに炎症を起こします。
<治療>
安静時にも痛みが有る時はスポーツを中断し、治療に専念しなければいけません。軽 い練習で痛みが有る時は、肩以外の運動なら良いでしょう。肩関節の治療は炎症が有 る場合は肩の炎症を治め熱感が取れるように治療します。また、肩周囲の筋肉をゆるめ、 炎症産物かスムーズに除去できるように働きかけます。
ねんざ・亜脱臼
ねんざ・亜脱臼は障害というより怪我の部類に入りますが、ある一定の動きをする事により引き起こされる事もありますし、スポーツをしていると何らかの捻挫を起こし、後遺症に苦労している方も多くいます。関節の動く範囲を超え強制的に曲げられたり、引っ張られたりすると、骨と骨とをつなぐ靱帯、腱が延ばされ、損傷を受けます。また、肩やひじ、ひざなどの関節が引っ張られ、関節から骨が外れる事を脱臼と言い、いったん離れたものの、元の関節に戻ったもの、または、ずれて戻ったものを亜脱臼と言います。「ねんざ」と言うと、足首をイメージしますが、むち打ちやぎっくり腰もねんざの一種と考えられます。
亜脱臼は、ねんざのひどい状態で、一度関節からはがれずれたものをさします。
〈治療〉
ねんざを起こすと、その関節の周囲にある骨と骨をつなぐ腱や靱帯が延ばされ炎症を 起こします。炎症の度合いにより、スポーツの中断はもとより、日常生活でも安静にしな ければいけない時もあります。ねんざを起こした直後は関節の腫れを伴いますので、炎 症を鎮め、熱を引かせ腫れを引かせるように治療します。腫れが引き、炎症が治まった ら、患部の血行を良くし、伸びた靱帯をできるだけ元の状態に戻すようにします。ねんざ は癖になりますのでスポーツ中はテーピングなどで予防をする事も重要です。
肉離れ
不意の動作、短距離走などで、筋肉に瞬間的に強い力がかかると、普段筋膜という膜で繋がっている筋肉が剥がされ、筋肉と筋肉の間に炎症を起こします。軽い状態では筋膜炎と診断されますが、筋肉が剥がれると肉離れと診断され、状態が酷いと筋断裂と診断されます。主に大腿屈筋(太ももの裏側)、大腿直筋(太ももの前側)、腓腹筋(ふくらはぎ)に発生します。肉離れの程度により炎症部位が出血を起こし、内出血として後日現れます。
<治療>
急性期には冷却、圧迫、固定が原則です。その後患部の血行を良くし、筋肉をゆるめ、 炎症を早く治める事が重要です。筋肉の疾患は治癒に時 間がかかるため、復帰は 軽めの運動から始め、症状が残る場合は復帰を延期しなければいけません。肉離れを 起こしたまま炎症が治まる場合もあり分離と言いますが、患部の筋力は格段に落ちます。