現代人の多くが睡眠に関する悩みをもっています。日本の成人男女について調べた調査では、約5人に1人が、睡眠に関する何らかの悩みを抱えています。その睡眠に関する悩みである不眠の分類は、大きく分けて2つあります。1つは、身体的な病気や精神的な病気などの原因が明らかな物であり、もう1つは、原因が不明確
なものであり「入眠障害」や「中途覚醒」などと呼ばれるものです。また、原因が不明なものをいわゆる「不眠症」と呼び、睡眠の悩みのほとんどを占めています。

治療

漢方医学の基本理念は、患者さんのアンバランスな身体をバランスのとれた身体に整えることにあります。不眠症においても同じことが言えます。漢方的に不眠症を分析すると、熱によるアンバランスがあります。これは身体の内側に冷えや熱が旺盛で体の外側とのバランスが良くない場合や、身体の上部において、特に胸から上(首や胸など)に熱が旺盛な場合で下半身とのバランスが良くない場合などです。これらのアンバランスをハリやお灸で整えるのですが、不眠症は様々な種類があり、それらに応じて治療方法は異なります。例えぱ、眠った気がしない、夢が多い、中途覚醒(夜中に眼が覚める)、入眠障害(寝付きが悪い)、早朝覚醒(朝早く目が覚める)、眠らなくても平気などなど。細かく診ると一人一人症状は違うものです。これらの多種多様な不眠症に対して漢方治療は症状に応じて使うツボを変えます。例えぱ、お腹が空きすぎると眠れないという患者さんがいたとします、何かを食べれば眠れると訴えます。このような場合は、胃腸が異常に活動して、胃腸に熱が発生し、その時の熱が胸や頭に昇ると不眠となります。ハリやお灸では胃の異常活動の熱を抑えるツボを使います。また中途覚醒では、何らかの原因で身体の上部(胸や頭など)に熱が多くなった時に、その熱のために夜中に眼が覚めやすくなるので、下部に熱を下ろすツボを使います。このように様々な不眠症に対して漢方治療は、アンバランスを整えるという基本理念に基づき治療を行います。