先進国の精神疾患について
環境の変化と精神疾患
精神疾患についてはこの数年で取り巻く環境が急激に変わってきているように感じます。
まず、要因の第一に挙げられるのは、精神神経疾患に関わる患者さんの数自体が増えたということです。これは、昔より精神疾患に関する世間の認知度が増え、患者さん自身も精神疾患として医療機関を受診しやすくなったからだと思われます。僕がこの仕事に就いた20年前は、今ほど精神疾患の患者さんは多くありまんでした。(もちろん、心の奥底にある疾患を見逃していた事もあると思いますが…。)それだけ世間の状況が変わってきていると言えます。
発展とその代償
今は物事が便利になり、それぞれが細分化され、世の中はますます便利になっています。例えば、「日本の飛行機の発着時間の正確さは世界一」とか、「宅急便が正確に届くのは日本だけ」など、生活している周りを見渡してみると、全てにおいて繊細な工夫が凝らしてあります。しかし、その一方で、バスが5分遅れると、重大なミスを犯していると感じるたり、マスコミでも「電車が20メートルオーバーランした」とか、「ハンバーガーに異物が入っていた」とか、昔なら良くある些細な出来事が、今では過剰なな報道ををされる社会風潮になってしまいました。
確かに日本人は生真面目で、几帳面で、繊細で、社会的秩序を守れる民族なので、そういった、せせこましい、融通の効かない社会風潮からすると精神疾患になる基盤が多いのかなと思います。
世界の精神疾患の実情
では世界の精神疾患の実情はどうなっているかと言うと、また違った事がみえてきます。
精神疾患の発症率を「自殺率」という形で見てみると、自殺率のの多い国ナンバーワンはグリーンランドだそうです。その要因としては、「寒い気候」と「白夜」だそうです。「夜にならない」とか、「夜が明けない」というのは、人間の本質にとってはかなりきついことのようです。同じ理由でフィンランドも自殺率が高いです。「暗い時間」、「晴れない日」が続くとうつ傾向になりやすくなります。日本でも、日が沈むのが早くなる晩秋になると憂鬱になる方が増えますし、自殺率の多いのは寒い地方の独居中高年だそうです。
その次に自殺率の多い国として、リトアニア、ロシア、カザフスタン、ベラルーシなどで、これらの地域は、社会情勢不安、紛争地域、それに加わりアルコール性の問題が有るそうです。(イスラム圏は自殺を禁じているので紛争地域が多くても自殺率は少ないそうです。)アフリカ諸国では疫病の蔓延、疫病による家族の喪失などが原因だそうです。国それぞれで統計の仕方が違うので一概には言えないのですが、「自殺率」という見方で精神疾患を見ると、先進国の方が多いのかなと思っていたら、そうではないようです。
日本の自殺の原因としては、1番が健康不安、次に生活苦、家庭問題、勤務問題という順になっています。いじめ問題は大きく取り上げられがちですが、全体の1%というカウントになっています。
精神疾患の治癒率
問題なのは、この治癒率です。治癒率になると、先進国は途上国に比べかなり下がります。
途上国では、先ほど言ったように、情勢不安、紛争地域などの問題から、精神疾患にかかる率はとても多いのですが、治癒率はとても良いそうです。つまり、精神疾患になる問題の性質上、あまり後を引かないのです。追跡調査した統計では、人生で精神神経疾患にかかった回数は1回済んでいくそうです。つまり、「紛争地域で家が無くなった」とか、「近親者が殺された」とか、「疫病で家族が無くなった」などのショック(攻撃的刺激)から精神疾患になっているため、それほど長くは続かないと言う事です。ただ、この1回のうちに自殺するので、自殺率は上がります。一方、先進国では、人生の内で3回4回と精神疾患にかかる人が少なくないそうです。これは、精神疾患にかかる原因によるとされています。先進国では、安定した社会情勢が関係しているので、患者を取り巻く社会情勢が変わらなければ精神疾患になる原因も減らないと言う事になります。
日本に置き換えて考えれば、生真面目で責任感が強く几帳面な日本人ならではの問題が山積みで、そう言った性質が有る状態で、自分と時間の流れ方が違う社会生活と向き合うと、焦り感、不安感、孤独感を感じ、出口のないトンネルに入った状態になるのです。途上国の「生命の危機」の様な攻撃的な問題で精神疾患になっているのではなく、経済発展に伴う、日本人ならではの問題の積み重ねで精神疾患になっているのです。また、社会情勢が安定している事は良いのですが、その為、同じ生活を繰り返し、治癒率を低下させているとも言えます。
鍼灸院ができる事
現在、精神医療の世界でも、鍼灸院の様な服薬などに頼らない代替医療(オルタナティブメディスン)が注目されています。それだけ薬による治療に限界を感じているのでしょう。当院の鍼灸治療が精神疾患に対してできる事は沢山あります。その大前提として「体が楽になれば心が楽になる」という考え方です。体に余裕がないとココロの余裕も生まれません。食欲、お通じ、睡眠、肩こり、頭痛、だるさ、朝方の不調、動悸、手足の冷え、などを改善し、ベストな体調を作る事が精神疾患克服への近道です。体に不調があってはそれだけでストレスです。健全な肉体にこそ健全な精神は宿るのです。
清須市の鍼灸院で働く若先生より