病の基本は陰陽から

漢方はり治療では病気の原因を考えるとき、はじめに「陰」と「陽」の二つに分けて考えます。
「陰」と「陽」の二つに分けて考えると言うことは、物事を太極に分類して考えると言うことです。
たとえば、この患者さんは「熱」を持っているのか「冷え」を持っているのか。暖めなければいけないのか、冷やさなければいけないのか。硬くしなければいけないのか、柔らかくしなければいけないのか、緩めなければいけないのか、引き締めなければいけないのか、血流を速めなければいけないのか、遅くしなければいけないのか等です。
このように、先ず病態を二つに分けて考えます。

二つに分けた後は三つに分けて考えます

そして、陰陽、寒熱が分かったら、次に、何がどうなっているかを考察するため、病の状態を「気、水、血」の三つに分けて考えます。
つまり、確認した陰陽、寒熱が、何の過不足によって起こっているものなのかを考察します。

気の異常

漢方医学では、人体の異常は、まず、気の異常から起こると考えられています。
気は「働き」や「作用」を指すため、気が多く集まる所は人体の機能が正常に営まれ、気が少ない所は、人体の機能が停滞してしまうと考えます。
例えば、体表面の気が充実していれば、冷たい風にあたっても、すぐにカゼを引いたりはしません。内臓の気が充実していれば食欲旺盛で、多少の事ではお腹を壊したりはしません。ココロの気が充実していれば多少の事で喜怒哀楽に偏りは出ません。
反対に、気が十分に巡っていないと、すぐにカゼを引いてしまうし、食欲は無く、すぐに胃腸を壊してしまいます。また、些
細な事で、喜怒哀楽に偏ってしまい、感情のコントロールがきかなくなります。
この様に、気の異常は、人体が病気になってしまう最初のステップともいえるのです。

水の異常

気に異常が起こると、各臓腑、器官で先ず起こるのは、水分バランスの異常です。
気に異常が起き、体表面の水分の代謝が悪くなると、体温調節を上手くする事ができなくなり、冷汗をかき、寒気を誘います。また、反対に、汗をかいて体温を下げないといけない時に、汗をかかないと体温が上昇し発熱します。
内臓では、余分な消化液が出れば胃酸過多になり、胃痛、胸やけを起こし、反対に、消化液が不足すると、食欲不振、胃膨満感を起こします。
筋肉や関節に余分な水分が溜まると、下半身はむくみやすくなります。むくみが慢性化すると、体が重くなり、慢性的にだるくなります。関節に水がたまると、関節は太くなったり、大きくなるため、曲げると圧迫され関節炎を引き起こします。午前中は顔、手の指などにむくみが集中し、午後になると下半身にむくみが集中します。
また、発汗とココロは密接につながり、緊張、不安、怒りの感情のときには発汗するのが正常であり、悲しみ、喜びの時には涙が出るのが正常です。
気の異常とは関係なくても、暴飲暴食や飲酒、果物の摂り過ぎ、運動不足、急激な気候の変化、ストレスなどは直接水分の代謝を悪くします。

血の異常

気の異常や水の異常から、血の循環異常を起こします。
気の循環不足から血流が悪くなったり、浮腫みなど水の停滞から血流が悪くなると、血流の行き届かない部分は冷え、血流が溜まった部分には熱を持ちます。
血液の量自体が不足すると(現代医学的な貧血など)、少ない血液で生命活動を維持しなければいけないため、人間にとって大事な心臓、脳を守ろうとします。そのため、血液は上半身に集まり、手足末端は血流が不足し冷えるようになります。
また、血液の量は正常でも、水太りなどで余分な水分が多いと血流が悪くなるため、手足末端は冷えるのですが、血液の量は正常なため、少し暑くなると、のぼせてしまい、汗をかいて冷えてしまいます。そのため「暑がりで寒がり」になります。
いずれも、上半身に血液の停滞が起こるので、肩、首、後頭部は充血してコリやすくなり、反対に、お腹、腰、下半身は血流不足から冷えて腹痛、腰痛、神経痛、足がつるなどの症状が出やすくなります。
内科では、内臓が悪い訳ではなく、内臓を働かせる血流が悪いので、「食欲はないが食べたら食べれる」と言う状況になり、お通じに関しても、「数日でなくても平気」と言う感じになり、排便も、出始めは硬いがその後軟便になります。
また、ココロに関しても良い影響はなく、のぼせが多く胸に熱がこもると、「動悸」「胸騒ぎ」「イライラ感」「焦り感」が起きやすくなり、頭に熱がこもると、頭重があり、集中ができなくなります。
また、血の異常は、気の異常、水の異常とは関係な、筋肉疾患、打撲、婦人科疾患などから直接影響することがあります。

清須市の鍼灸院で働く若先生より