【うつ病について①】

☆「憂うつ」と「うつ病」は違う
医学的には「憂うつ状態」と「うつ病」は区別して考えています。誰でも経験する憂うつな状態と、治療を必要とするうつ病を分けて考える必要があるからです。
しかし、「重度な憂うつ状態」と「軽度なうつ病」があることも事実で、「重度だから病気」で「軽度なら病気ではない」と言うわけではありません。
誰でも経験するであろう「憂うつ状態」は辛い事に間違いないのですが、回復も早いので「病」ではなく「状態」と位置づけられています。
治療を必要とする「うつ病」では①抑うつ気分、②意欲や行動の低下、③身体症状の3つの症状が現れます。
① 抑うつ気分
気分が落ち込み何事も面白くない、また訳もなく悲しい気持ちになったりする。
② 意欲や行動の低下
億劫で何も出来ない、仕事も休みがち、外出を嫌う、人と会うのを避ける、思考の進み方も遅くなる。
③身体症状
睡眠障害、食欲や性欲の減退、時に過食。頭痛、めまい、動悸、口渇など様々な身体的不調が起こる。

☆漢方医学は「うつ病」を「心の病」と考えていない
漢方医学の考え方は「心身一如」です。現代西洋医学のように心と体を分けて考えていないのです。
現代西洋医学は要素還元的考え方に基づき発達してきました。内科、耳鼻科、整形外科などのように、体を部分部分に細分化し、その部分を突き詰めて研究することによって発展してきたのです。その結果、心療内科(精神科)も、心(脳)を体と切り離して考え発展してきました。
現在心療内科分野で言及される内容は、脳内物質である、神経細胞、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンの状態を詳細に研究する内容が大半です。

☆体が疲れているから心が疲れてしまう
漢方医学は「心と体は一つ」と考えています。
「体が疲れると心も疲れる」「体が疲れているから感情が疲れてしまう」と考えるのです。
誰でも、よく眠れておいしいものをたくさん食べた後は、心が健やかになり多少の困難にも打ち勝てるものです。
反対に、仕事のトラブルなどで残業が続き睡眠時間を削られ空腹で帰ってきたときには、些細なことにもイライラしてしまい感情が乱れやすくなるものです。
ましてや産後など体調不良で寝不足状態が続けば、様々な感情が極端に出てしまいます。

☆すべては睡眠障害から
憂鬱状態が長く続けば、疲れも溜まりやすくなります。
疲れが溜まってもよく眠れて食事が美味しく食べられれば、翌日には回復しているものです。
しかし、憂鬱な状態が長く続けば続くほど、まず眠れなくなります。眠れないと疲労は回復せず、疲れているのに眠れないとさらに体調が悪化します。体調は悪化しているのに憂うつな状態が続けば、さらに憂うつに拍車がかかります。
人間は疲れすぎると眠れなくなるのです。
そして疲れている時は良いことを考えられなくなりマイナス思考になります。
憂うつ状態が長く続くと言う事は、どちらかと言うと思考の使いすぎで肉体労働よりも頭脳労働が多くなります。
もちろん肉体的な疲労もあるとは思いますが頭の使いすぎで脳の疲労の方が多くなります。
人間の血液は使うところに多く流れます。
頭を使いすぎると頭の血流が多くなり、頭が熱くなります。
実際に首、肩、背中を触っても熱くなっていることが多くあります。
ちょうどパソコンや携帯でインターネットに接続していると機能をフル活動し熱くなるのと同じです。
頭が熱く血液の停滞が多くなると、さらに考え込んでしまいます。
血液が多くあるところは機能が更新してしまうのです。脳の機能は「考えること」ですので頭の血流が多いと考えまいとしても考えてしまうのです。
「考えるな、考えるな」と考えてしまうのです。
疲れているのに眠れない、寝ようと思えば思うほど頭が冴えて寝付けない。寝付いたとしても考え事が多く寝ている時も考えてしまう。考えることもネガティブなことが多く緊張しながら寝ていると眠りも浅く、朝方早く目が覚めてしまうのです。

☆漢方はり治療のできる事
漢方はり治療では、血流を良くし頭に溜まった血液を手先や足先に引いてあげることです。
手先と足先が温まり頭が涼しくなれば、寝付きが良くなり、夜中に目が覚めません。
眠れないのは脳の異常ではなく体の異常なのです。睡眠薬などで脳にアプローチするのではなく、体調にアプローチすることで眠れる体調を作っているのです。
「考えるから眠れない」のではなく、「眠れないから考える」のです。
まずは眠れる体調作りをすることが漢方はり治療の考え方です。