4人に1人が胃の悩み

ある調査では、日本人の4人に1人が胃に何らかの症状があるそうです。特に多い症状は「胃の痛み、もたれ、胸焼け」の3つです。
「痛み」は空腹時に痛くなったり、食事の後に鈍痛を感じたりするものです。「もたれ」は食べ物を食べるとすぐにお腹がいっぱいになる「膨満感」や、「食欲不振」「むかつき」なども含まれます。「胸焼け」は、酸っぱいものが込み上げたり、胸が熱くなるという症状です。
一般に、痛みやもたれ、胸焼けがある場合には、「潰瘍、胃炎、胃がん、逆流性胃炎」などの病気が疑われます。ところが、このような症状のある人を、内視鏡などの検査で調べても、約半数は異常はありません。つまり、胃に炎症や潰瘍がなくても、胃の症状を訴える患者さんが多く見えます。このような患者さんに鍼灸治療が適応する場合が多くあります。

漢方医学では

漢方医学では、「元気」のことを「胃の気」と言うくらい、胃は心臓の次に陽気が多く、活発にはたらく所とされています。胃がしっかりしていれば、食べたものが順調に小腸、大腸へと流れ、栄養分(「後天の精」という)として吸収され、活動力の源になります。
しかし胃は、体質によって丈夫な人と、そうでない人との差が極端に現れます。
胃が丈夫な人では、胃は陽気が多い分、熱を持ちやすく、例えば、冷たいジュースやアイスクリームなどを取り過ぎても、その時はいったん冷えますが、次の日にはその冷えを解消し、冷やされた状態を挽回する力を持っています。しかし、丈夫な為、ついつい冷飲食の過食、暴飲、暴食などの不摂生を続けてしまい、今度は胃が必死に回復しようとするあまり、オーバーヒートを起こし、かえって熱を持つようになります。この熱は、痛み、胸焼け、膨満感を引き起こします。そしてこの熱は、食道、口へと上がり、口内炎、口渇、唇の荒れ、口角炎などをひきおこします。軽い炎症の慢性化です。
胃が丈夫でない人は、ちょっとした不摂生でも上記のような症状を現してしまいます。また「思えば脾胃を傷る」と言われ、思慮過度、つまり、思い悩むことがあると、すぐに胃の働きが悪くなり、食欲不振になります。

治療

治療は先ず、患者さんに細かく問診することから始まります。胃痛や胸焼けであっても、症状や程度はまちまちで、いつ、どのように、どのくらい症状が現れるのか。また、それはいつごろから始まったのか、どのようなときに悪化するのかなど、患者さんの症状にあわせて問診をしていきます。そしてその問診を手がかりに、脉を診て、お腹を診て、何が原因で、胃に熱を持たせているのか、何が原因で働きが悪くなっているのかをさぐり、ハリをするツボを決めます。ほぼ痛みを感じることはありません。また、症状にあわせてお灸をする場合もあります。この時のお灸も決してやけどを起こすような強い刺激のお灸はしません。