胃潰瘍は食後に痛み、十二指腸潰瘍は空腹時に痛むというのは、現代医学的な考えですが、はっきりと区別できない場合は多くあります。また、最近では「ヘリコバクターピロリ菌の感染が原因」と盛んに言われますが、一概に、そうだといえない場合も多くあります。胃潰瘍、十二指腸潰瘍では、食べ物と無関係に起こる痛みもあり、食欲についても様々で、「全く食欲が無く食べ物が喉を通らない」ものから、「食べるには食べられるが、すぐに満腹になってしまう」もの、「食欲はないが食べれぱ食べられる」もの、中には、「お腹が空いて空いて仕方がない」と言う人もいます。漢方はり治療では、痛み方、痛みの種類、食欲などを考慮して、大まかに二つに分類しています。

寒と熱

漢方では物事を、陰陽に分けて考えます。静、衰、弱、などを表す「陰」と、動、盛、強などを表す「陽」。この場合の「陰陽」はズバリ、「寒と熱」。つまり患部に「寒」があるのか「熱」があるかと言う事を表します。

「寒」が原因と考えられるもの。

寒の場合はお腹を触っても冷たく、温かいものを好み、冷たいものをのむと悪化します。なま物、冷物の食べ過ぎなどから発症します。口には唾液が良く溜まり、歯を磨くと「ウエッ」となり、酸っぱい胃液が込み上げたりします。冷えている為に胃の働きが悪く、食欲はあまりありません。また、食べたものを腸に送る力も弱いので、食後すぐに痛くなる場合もあります。食欲はないが、食べたら食べられる場合もあります。これは胃そのものには「寒」はないが、胃を働かせる血が少ない為、「寒」の時と同じ状況になっているためです。気の使いすぎや、ストレスなども原因の1つで、空腹時や、いらいらすると痛みは増します。

「熱」が原因のもの。

熱の場合は、胃腸が熟い為、喉が渇きやすく、冷たい物が欲しくなります。胃は、熱によって、無理矢理働かせられているので、食欲は旺盛で、空腹時は、痛みや膨満感が強く現れます。その為に、「常に何か食べていたい」「げっぷも良く出る」。熱が慢性になると口が苦くなり、やがて味が分からなくなります。「寒」が原因のものでも、慢性になると熱へと発展してしまい、痛みも強くなります。暴飲暴食、肉体疲労、慢性的なストレス、胃腸風邪の後にも見られます。

治療

まず、胃に「寒」や「熱」を起こしてしまう原因を、問診や、触診、また脈を診て探します。「寒」が原因のものでは、暖める作用のあるつぼを選び、「熱」が原因のものでは、冷やす作用のあるつぼを選びます。治療は全身治療が主となります。はりは、経絡の、気の流れの調節ですので、深くは刺しません。もちろん痛みはありません。その後、お灸で、さらに全身を整えて終わりです。この場合のお灸も、熱くなる前に取るお灸ですので、火傷などは一切残りません。