成人の半数以上が「痔」を患っているといわれますから、痔は決して珍しい病気ではありません。

痔は、痔核(いぼ痔)・裂肛(切れ痔)・痔ろう(穴痔)に分けられます。

肛門は直腸粘膜とそれに続く肛門上皮という部分がクッションの役割をしていますが、この部分には、動脈や静脈、筋繊維などが集まっています。日常生活の肛門への負担からこのクッションの部分が大きくなってしまうことがあります。例えば、便秘などをしてトイレで強くいきむと、クッションの部分は静脈が多くうっ血しやすいので、いきみが度重なると腫れて大きくなり出血したりします。これが「痔核」です。 また、硬い便が無理に肛門を通ったり、下痢便が勢いよく通りすぎることによって肛門が裂けたりします。これが、「裂肛」です。痔ろうとは、下痢などにより、大腸菌などが肛門腺で炎症を引き起こすと膿がたまり、その膿の出口を作るため、トンネル状の管が通じてしまうことをいいます。

三大原因は、下痢や便秘・トイレでの強いいきみ・肛門の不衛生

①下痢や便秘の繰り返し
②いきんだり長い時間トイレに座ったりするのは、肛門をうっ血させるのでよくない
③肛門の不衛生
④アルコールの取り過ぎによる下痢
⑤食物繊維の摂取不足
⑥少食により便が少なすぎる
⑦便意の我慢により感覚が鈍くなると便秘になる
⑧不規則な食生活は、不規則な排便習慣につながる
⑨立ちっぱなし、座りっぱなしは肛門がうっ血しやすくなる
⑩ストレスが多いと自律神経を乱し、便秘や下痢になりやすい
⑪必要以上に下剤や下痢止めを服用すると下痢や便秘を招く
⑫出産時のいきみ

治療の基本は保存療法

現代医学で手術を受けなければならない、治りにくい痔の患者さんは、15~20%です。これは、大半の患者さんの場合、保存療法で治るということです。しかも薬物療法はあくまでも補助的な療法であり、基本は生活療法となります。生活療法とは、先に述べた痔の原因をなくしていくというものです。
漢方はり灸治療では、患部だけでなく全体を診るのが特徴です。ですから患部の血行不良を改善するために、全身の血行を促進させる作用のツボにはりとお灸をしていきます。
また、一番大きな原因となる排便の異常を改善するために、患者さん一人一人の体質を見極め胃腸の冷えや熱のバランスも整えます。それと同時に血行をよくする運動を心がけたり、適切な食生活を保つのも大切です。