日本人の10人に1人以上が糖尿病、または予備軍

厚生労働省が行った調査によると、日本には「糖尿病」を強く疑われる人が約690万人、糖尿病の可能性を否定できない「糖尿病予備軍」の人が約680万人いるという結果が出ています。合計すると1370万人ですから、日本人の10人に1人以上が、糖尿病、もしくは糖尿病予備軍ということになります。この人数は現在も増え続けており、201O年には2倍近くになるだろうと予測されています。
このように糖尿病が増えてきた原因はいろいろ考えられますが、日本人の食生活の欧米化が、大きな原因になっていることはまちがいありません。この数十年間で日本人の食事内容は大きく変化し、脂肪をたくさん摂取するようになってきました。それと歩調を合わせるように、糖尿病も増えているのです。脂肪の多い高エネルギーの食事を続けた場合、日本人は欧米人より、糟尿病になりやすい体質であることが明らかになっています。この体質も、糖尿病が急増した原因になっています。また、多くの人が健康診断などで糖尿病の可能性を指摘されているにもかかわらず、たいしたことはないだろうと、放置してしまいがちです。これも、糖尿病の患者数の増加につながっています。

怖いのは合併症

糖尿病の一般的な症状として、口渇、多飲、多尿、倦怠感、易疲労、女性では外陰部のかゆみ等があげられます。これらは我慢できなくも有りません。しかし本当に怖いのは、知らず知らずに糖尿病が原因の他の病気にかかることです。
動脈硬化・・・加齢によって誰でも起こりますが、糖尿病になるとごく初期のころから現れ、太い血管が硬くなり心筋梗塞などの原因になります。
神経障害・・・高血糖の状態が続くと末梢神経が障害され足先のしびれ、感覚麻痺、けがを負っても治りにくく、場合によっては足の一部を切断しなければなりません。
網膜症・・・眼球の内側を覆っている網膜の血管が破れ、視力が低下し、場合によっては適切な処置をしないと失明することもあります。
腎症・・・発病から十年以上経つと、腎機能が低下し毛細血管が障害され、血液をろ過できず尿が排泄できなくなり、進行すると腎不全になり透析療法が必要になります。

漢方はり治療では

漢方医学ではすべてのものを陰と陽に分けて考えます。糖尿病になると口渇、多飲、多尿、浮腫など、水分バランスが保てなくなり体の真に熱を持ちます。先にあげた動脈硬化、神経障害、網膜症、腎症も全て、血管や組織に潤いがなくなり損傷されやすくなった状態、つまりパサパサになった状態です。この熱はカゼなどの体温計で計れる発熱とは違い、組織を冷やす水分が不足して起こる熱です。これを漢方医学では「陰虚熱」(陰である水が不足して起こる熱)が原因で発症すると考えます。冷やす作用が有り陰である水が上手く組織に入り込めずに起こる熱ですので、治療は水を吸収しやすくするツボや、水をめぐらすツボにハリをします。
糖尿病は何と言っても患者さんの努力なくしては改善できません。治療を受け、体調を改善できても、いつも通りの生活をしていてはいけません。その分難しい病気と言えます。患者さんの精神的な負担も大きく、どうしても患者さんと治療家の二人三脚で取り組まなければならない病症といえます。