甲状腺とは

甲状腺は、のど仏の下辺りに位置するホルモンを分泌する機関で、全身の各細胞で呼吸量、エネルギー産生量を増大させ、基礎代謝量を促進させる甲状腺ホルモンなどを分泌します。

甲状腺に異常が起きると・・・

甲状腺の異常には大きく分けて2つあります。
1つは甲状腺の機能が過剰になって起こる機能亢進症です。甲状腺機能亢進症の代表には、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されるバセドウ病(別名:グレーヴス病)があります。バセドウ病は手足を持ち上げると振るえたり(振戦)、目が異常に前に飛び出たようになったり(眼球突出)、少しの動作でも異常に動悸がしたり、甲状腺のあるのど仏の下が腫れたり(甲状腺腫脹)、何もしていないのに汗が異常に出たり(多汗)、食べているのに体重が減ったり、その他にも高血糖、高血圧などをおこします。
もう1つは、機能亢進症の反対に、甲状腺の機能が低下することによって発症します。甲状腺ホルモンの分泌が不足する代表的なものに慢性甲状腺炎(橋本病)があります。症状としては、異常に体がだるく(全身倦怠感)、発汗が減少し、あまり食べていないのに体重増加したり、内臓が動かないことにより便秘などを生じます。

漢方医学での見方

漢方医学では、甲状腺の機能亢進症によって起こる病症は、すべて熱の波及によるものと考えています。過労や発熱後などに適切な処置をしていなかったり、成長期に極度の不摂生をしたりすると、体の中に余分な熱が発生します。この余分な熱が体に残ることによって色々な症状が起きてきます。この余分な熱は体温計で測っても異常はなく、体の芯に「ほてり」として残った熱です。もちろん、過労や発熱、不摂生などがなくても余分な熱が発生する場合もあります。余分な熱が発生する一番の理由としては体質があります。もし、その余分な熱が胸にこもると、心臓や肺が熱を持つため、少し動いただけでも動悸や息切れを起こします。胃にこもると、胃が異常に働きすぎるため、食欲が旺盛になります。しかし、新陳代謝も異常に活発なため、食べても太らず、むしろ、食べていてもやせてきます。新陳代謝が活発なため、発汗も異常になり、常に汗をかきやすくなります。また、咽は経絡で言うと「少陰経(しょういんけい)」の突き当たりです。少陰経は体の水分バランスを調節し、体がオーバーヒートを起こさないように冷やす働きがあります。しかし、この少陰経の尽きるところである甲状腺で炎症が起きるため、体を冷やすことが出来ず、余分な熱がいつまでもくすぶり続けると考えられます。ただでさえ熱いため、夏に症状は悪化します。
甲状腺の機能低下症によっておこる病症は、亢進症とは反対に、すべて冷えによる病症になります。冷えは血行不良からもたらされます。つまり、貧血状態がある一定部位で起こるのです。手足の血行が不足すると冷えやすくなります。脳の血行が不足すると物忘れが激しくなります。また、話かたが遅くなります。腸で血行が不足すると食べたものを運ぶことが出来ず、排泄力が弱まり便秘になります。血管にも血行が不足する事があり、血管を形作れなくあるので、内出血、不正出欠、月経過多になりやすくなります。ただでさえ冷えるため、冬に症状は悪化します。

治療

機能亢進症の治療は、余分な熱を冷ます必要があるため、体を冷やす働きのある少陰経のツボにハリをします。そして、心臓や胃など、症状の出ている経絡と関係のあるツボにハリをし、更に熱を冷まします。
機能低下症では血液の生成を促す太陰脾経にハリをし、まずは血液量の回復を図り、血が十分行きわたるようにします。また、血液は飲食物の摂取により生成されるため、胃腸の消化吸収を助けるツボにもハリをします。最後にお腹を温めるお灸をします。