ほとんどの妊婦さんが経験するお腹の張り

妊娠すると、程度や頻度は人によって違いますが、ほとんどの方がお腹の張りやツッパリ感を訴えます。赤ちゃんの大きさに合わせてお腹が大きくなるので、張りやツッパリ感、時に痛みを感じるのも当然なことです。ただ、その症状が一線を越えてしまうと治療の対象にもなりますので注意が必要です。

妊娠初期

妊娠初期は、軽い生理痛に似た下腹部の突っ張るような痛みを感じます。これは妊娠によって子宮が大きくなり始めたために感じられます。子宮は他の内臓とは違い筋肉でできています。胃や腸は収縮性のある組織でできいますので急にものが入ってきても膨らむ事が出来ますが、子宮は筋肉でできていますので少しずつでないと大きくなる事が出来ません。その為、疲労やストレスなどで子宮への血流が悪くなると子宮の筋肉が増殖できず張りやツッパリ感が出てきます。こういった症状は、ある程度、妊娠する事で体が変化していくサインですので心配はいりませんが生活に支障があるようであれば、一度治療を受けた方が良いでしょう。

妊娠中期

安定期に入る妊娠中期は、つわり等がまだまだあるものの、お腹の張りが比較的少ない時期です。ただ、お腹の張りが無いからと言って、家事や仕事、レジャーなどでついつい動き過ぎてしまうと、後でお腹が張ることもあります。やっぱり妊婦さんなので動き過ぎには要注意です!

妊娠後期

妊娠後期になると、お腹の赤ちゃんもだいぶ大きくなるためり、ちょっとした動きや疲れなどでお腹が張りやすくなります。過密なスケジュールなどは避け、動き過ぎた後は休憩できる時間を確保する事もお腹が張らないようにするコツです。お腹の張りが、約30分以内に治まるときは心配いりませんが、30分以上張りが続いたり、痛みや出血を伴う場合は、切迫流や早産の危険がある為すぐに病院に連絡しましょう。

漢方はり治療では

漢方の本には「母血その精を養うに足らざる時は即ち胎児を致すことあたわず」など、「母親の血液が足りないと胎児を育てる事が出来ない」と言った内容の文章が頻繁に出てきます。その為、治療も血を増やすための治療法や血流を回復する様な治療法が頻繁に出てきます。妊娠してから母体は常に子宮に血液を送り続けなければいけません。妊娠初期では赤ちゃんの大きさは小さいため、さほど血液を必要としませんが、普段から貧血傾向の方は、血液を効率よく生成できる体質ではないため、急激な血液の需要に追い付かず、貧血傾向になり、少し動き過ぎたりするとお腹が張るようになります。また、一連の貧血傾向が体調不良となり、精神的にも不安定になりやすくなります。

感情とお腹の張り

心臓から一度に送り出される血液のうち、約40%が脳に行くと言われています。体の中で脳が占める割合はごくわずかであるにもかかわらず、筋肉よりも、内臓よりも脳は血液を必要としているのです。脳は使えば使うほど血液を必要とし、考えを巡らせば巡らせるほど貧血になっていくのです。また、その考える内容も、前向きに良いことを考えれば脳の血液消費はさほどでもないのですが、後ろ向きに悪いことばかりを考えていると脳の血液消費は格段に増えてしまうのです。簡単にいうと、悪いことを考えると心臓がドキドキしますよねー! という事は、それだけ血液を多く消費しているのです。そのため、感情の中でも、特に、ビックリした後や怒った後は普段よりお腹が張ってしまうのです。

治 療

実は妊婦さんのお腹の張りの治療と筋肉痛を治す治療はすごく似ているのです。妊婦さんのお腹の張りは急激に血液を必要とするため子宮への血液供給が追い付かなくなったため現れる症状です。筋肉痛は筋肉を使いすぎて血流が足りなくなったために現れる症状です。子宮は筋肉でできているため、どちらも筋肉へ血液がうまく流れるようにするツボを選んでハリをすればいいのです。血液を上手く流れさせるためには、まず血流量自体を増やす必要があります。血流量を増やすためには胃腸を整えなくてはいけません。貧血傾向の方は胃腸の働きも悪いため「お腹が空かない」とか「時間になったから食べる」と言う方が多くいます。まずは、食事の時間になったらお腹が空かないといけません。そして、お腹いっぱい食べれて、「おいしかった」と実感しなければいけません。その為、まず胃腸の消化吸収を良くするツボにハリをします。胃腸が整い血液量が増えたら、次に、血液の循環を良くするツボにハリをします。必要な所に必要なだけ血液がいくようにサポートします。この場合は特に婦人科である下腹部の血流をよくするようにハリをします。

張り止めのお薬について

よく「産院で張り止めを処方されていますが止めも良いですか?」と質問があります。と言うのも、産院で処方される張り止めには、動悸、頻脈、ふるえ、ふらつき、顔面潮紅、はきけ、体のほてりなど、一連の副作用がある為です。確かに、これらの副作用はあるかもしれませんが、このお薬が出来てから、早産の方が減ったという事実もあるそうです。基本的には鍼灸院では服薬についてのアドバイスはできませんが、鍼灸治療でお腹の張りは減り、服薬数が減る事はあります。