最近「喉の詰まり感」を治す薬のCMが放送されるようになりました。
それだけ悩んでいる方が多いということが世間に認知されたと思います

◆実は多くの方が悩まされています◆

喉に何かが詰まった感じがする、つばを飲んでも、水を勢いよく飲みこんでみても、ご飯を食べても何かのどに残った感じがする。魚の骨でも残っている様な感じがする。
この様に、「喉の痛み」ではなく、「喉の異物感」を感じてみえる方はじつは多くみえます。
カゼや、扁桃腺炎とも違い、中々無くならない喉の異物感。
ただ、異物感があるからと言って、それほど生活に支障が有る訳でもなく、むしろ、仕事や遊びなどをしている時は忘れる事もあるため、医療機関を受診するほどでもありません。
とにかく不快です。

◆感じ方は様々!◆

一言に、「喉に違和感がある」「のどに異物感がある」「喉に何かが詰まっている感じがする」と言っても、皆さん程度や状態は様々で、ぼんやり、そう言われるとそう言う感覚が有る方と、明確に「のどに何かある!」と言う違和感を覚える方がいます。
何となく喉に詰まり感のある方は、来院された時、ご自分で喉の違和感を訴える事は無く、こちらから問診することで発覚することがほとんどです。また、明確に喉の違和感を感じてみえる方は、すでに耳鼻咽喉科、内科などを受診し、各種検査を受け、「異常は無い」と診断されたが依然変わらないと言う方もいます。
確かに、こういった症状が長引いたり、心配だと思えば、ガンなどの大きな病気が隠れているといけないので、一度精密な検査を受ける事も重要です。

◆漢方はり治療では◆

現代医学的には、こういった症状はすべて「ヒステリー球」「咽喉頭異常感症」として、精神症状であり、心療内科の分野として扱われています。
漢方医学では、心と体を分けて考える事は無く、また、漢方薬では喉の違和感に対する処方も多く、症状により細かく分類されています。
漢方医学では、こういった症状を「梅核気」(ばいかくき)とか「咽中炙臠」(いんちゅうしゃれん)という呼び方をしています。
「梅核気」は文字通り、梅干の種が喉にひっかかった感じを表しています。「咽中炙臠」とは、喉に噛み切れない肉が詰まった感じを言います。もちろん実際には何も詰まっておらず、あくまでも「例えて言うならこんな感じ」になるのです。上手なネーミングだと思いませんか?

◆気・血・水による分類◆

それでは、何故このような症状を表すかです。
 漢方医学の基本的な考え方に「気・血・水」と言う分類が有ります。これらは、体を構成する成分と考えられていますが、このうち一つでも働きが異常を起こすと様々な症状を表し、また慢性化するとお互いに悪影響を及ぼし、さらに様々な症状を表します。
 「気」は漢方医学の基本となる概念です。「働き」や「作用」と考えても良いです。西洋医学的には電気信号、ホルモン分泌、神経伝達と言った働きです。「血」は、血液、血流を表します。「水」は消化液やリンパ液など、各種の水分を表します。喉の詰まり感はこれら「気・血・水」が何らかの異常で滞り、熱を持った時に発症すると考えています。

「気」の異常による喉の詰まり感の特徴

 気は「空気」と考えていただいても良いです。温かい空気は膨らみ、冷たい空気はしぼみます。喉に違和感を表す場合、多くは「気」が滞り、熱を持った場合に症状が現れます。
喉に熱が滞ると、空気の塊りが有る様な感じがしたり、喉に泡が溜まった感じになります。
温かい気は膨らむ感覚が有るので、喉が膨満、充満した感覚になります。
気の滞りによる喉の違和感は症状の移り変わりが激しいため、急に現れたかと思うと急に無くなります。昨日は良くても、今日調子が悪いとか、屋内に入ると調子悪いとか、電車に乗ると調子悪いとか・・・。
また、場所も、喉を中心に、上に行ったり、お臍おほうへ下がったりして落ち着きません。ヒステリー球、梅核気と言われる状態がこれにあたります。

「水」の異常による喉の詰まり感の特徴

喉の詰まり感における場合の「水の異常」は、消化器に関わる水分代謝の異常と考えても良いです。つまり、胃腸症状が関わっていると言う事です。
胃腸は常に消化液で満たされています。そこに熱が加わると、熱は上に上がる性質があるため、食道を伝い、突当たりである喉に違和感が現れます。
「喉に何かが張り付いた様な感じ」、「喉に泡が詰まった感じ」と言われます。
胃痛、胃の膨満感、逆流性胃炎、口渇、唇が荒れる、舌の苔が多くなる、口臭、ゲップなどの症状を伴います。
「水の異常」は、「気の異常」ほど流動性は無いため、症状の移り変わりはそれほど激しくは有りません。
むしろ、胃腸症状と直結しているため、胃の調子が良いと喉の詰まり感も減ります。暴飲暴食、飲酒なども関わるため、男性に多い傾向が有ります。

「血」の異常による喉の詰まり感の特徴

 人間の体は、血流が少ない所は冷え、血流が多い所は温まる特徴があります。
しかし、何らかの理由で、上半身に血流が滞ると上半身はほてり、肩や首は熱くなり、喉の詰まり感を表すようになります。
簡単に言うと、のぼせる事により喉の詰まり感が現れるのです。
喉の粘膜が乾燥して気道が張り付いて通りが狭くなった感じがするため、「息ができなくなるのではないか」という不安に駆られます。
特に女性は生理や閉経、更年期など、ホルモンのバランスから、血流の過不足を起こしやすくなり、ほてりやのぼせを表す事が多くなります。

◆色々な症状と関わる喉の詰まり感◆

上記したように、喉周辺に熱が停滞する事により喉の詰まり感は現れます。
そして、喉の詰まり感は、喉周辺に熱を持つ事により現れる副産物であり、喉そのものにアプローチしても何の意味もない事がお分かり頂けたと思います。
また、喉の詰まり感は「胸の熱」と関わりが深いため、精神的な症状とも深く関わってくるのです。
誰でも、緊張したり、焦ったり、怒ったりすると心拍数が増えます。心拍数が増えると、心臓は一生懸命拍動しているため胸や上半身に熱を持つようになります。
反対に、のぼせる事で胸に熱がこもると、ちょっとしたことで心拍数が上がってしまい、余計に胸の熱が増す事になります。
その為、満員電車や人混みなどの、のぼせる空間に行くと喉の詰まり感は悪化します。
また、喉のつまり感が現れると焦るため、動悸や息切れが悪化し、パニック障害や過呼吸症状を引き起こす事もあります。
また、慢性的なストレスは胃腸症状につながり、喉の詰まり感を悪化させます。
この様に、「ストレス」と「喉の詰まり感」は多くの場合影響し合っているのは事実です。
しかし、根本となるストレスを無くす事はなかなか困難な事であり、実際には無理です。
漢方はり治療で目指すところは、「ストレスに影響されない体調づくり」です。体調さえ万全であればちょっとしたストレスもはね返す事ができます。
体調さえよければ、ストレスに影響されないのす。調子良いコンディションを保つ事により、ストレスをストレスと感じない体調づくりを目指しています。

清須市の鍼灸院で働く若先生より