神経症
神経症とは
神経症とはドイツ語で言えば「ノイローゼ」です。しかし、一般に使うノイローゼとは少しニュアンスが違うように思います。何かのきっかけで内向的になりやすい状況に陥った時、また、もともと内向的な性格の方が、不安や焦りなどの心の動きによって、精神的、あるいは身体的に症状が現れる物を言います。身体的な症状といっても、胃潰瘍や喘息など身体の炎症を伴う症状はなく、多くは動悸、頭重、食欲不振、咽のつまり感など、検査をしても数値に異常の表れないものがほとんどです。むしろ身体的な症状よりも、精神的な不安感、焦り感、恐怖感、抑うつ感、無気力、また時に浪費癖、盗癖、性的逸脱行為に苦しみます。また、うつ病などの精神病とも少し違う症状です。
神経症の種類
神経症はきっかけや現れた症状によって分類する事が出来ます。代表的なものとして「不安神経症(パニック障害)」「心臓神経症」「強迫神経症」「抑うつ神経症」などがあります。
不安神経症(パニック障害)
色々な不安が症状として形に現れます。とは言うものの不安を味わったことの無い人はいません。ここで言う不安は漠然とした思い当たる節の無い不安です。その漠然とした不安が気になりだし、今度はその漠然とした不安が心配の種となり不安が不安を呼ぶようになり、取り越し苦労が始まります。しかもその不安感はとても耐えがたく、普通の不安とは少し趣が異なり、病的な不安となって心を占領します。身体的にもその不安から筋肉が緊張し、肩がこり、動悸、息苦しい、寒気、口渇、手足の痺れ、下痢など、誰でも緊張すると現れる症状がより強く現れます。また時に、このような状態が知り合いのいない外出先などで起きると、不安が重なり、パニック状態となります。人ごみなどで急に頭が重くなり、強い不安感とともに息苦しさから「今にも死ぬのでしまう」「気が変になってしまう」と確信し、失神しそうになりますが実際に失神することはありません。これを「パニック発作」と言います。このパニック発作は数分でピークに達し、急速に治まって行きます。このパニック発作が度々起こったり、「パニック発作がまた起きたらどうしよう」という不安に思考が占領され、生活に支障を来たすほどになると「パニック障害」と言います。
心臓神経症
胸痛、動悸、息切れ、呼吸困難、めまいなど、心臓病によくみられる症状を示しているにもかかわらず、心臓を検査しても何も異常が見つからないものを、心臓神経症といいます。一度強い動悸などを感じてしまうと、「心臓」と言う臓器の存在を感じてしまい、つねに意識が心臓へと向いてしまい、些細な症状から心臓病を疑い、その不安が更に動悸を誘い、「自分の心臓は絶対に病気に違いない」と確信を持つようになります。このような症状は神経質な人や、子どもから手が離れ、暇な時間ができたために自分の体の状態が気になるようになった女性、親しい人を心臓病で亡くして心臓病に対して不安感を抱いている人などによくみられ、家族、周囲の人や医師に執拗な訴えを続け、検査を何度繰り返しても病気である事を主張し続けます。また本人も頭では病気で無い事を理解していても感情のレベルでは心底受け入れる事が出来ていません。
強迫神経症
強迫症状の内容には個人差があり、ありとあらゆる事が要因となり得ます。しかし、比較的よく見られる症状を下記に記します。また一人の患者が複数の強迫症状を持つことも一般的です。
不潔強迫…汚れが気になり、手や体などを何度も洗わないと気がすまない。体の汚れが気になるためにシャワーや風呂に何度も入る等。
確認行為…確認強迫ともいい、外出や就寝の際に、家の鍵やガスの元栓、窓を閉めたかが気になり、何度も戻ってきては執拗に確認する。電化製品のスイッチを切ったか度を越して気にするなど。
加害恐怖…自分の不注意などによって他人に危害を加える事態を異常に恐れる。例えば、車の運転をしていて、気が付かないうちに人を轢いてしまったのではないかと不安に苛まれて確認に戻るなど。
被害恐怖…自分が自分自身に危害を加えること、あるいは自分以外のものによって自分に危害が及ぶことを異常に恐れる。例えば、自分で自分の目を傷つけてしまうのではないかなどの不安に苛まれ、鋭利なものを異常に遠ざけるなど。
不完全恐怖…物を順序よく並べたり、対称性を保ったり、きちんとした位置に収めないと気がすまないもの。例えば、家具や机の上にある物が自分の定めた特定の形になっていないと不安になり、これを常に確認したり直そうとする等。物事を進めるにあたって、特定の順序を守らないと不安になったりするものもある。
この他にもクモやゴキブリなどを異常に恐れる動物恐怖、人前に出て行けない対人恐怖、電車、バス、エレベーターに乗れない閉所恐怖、高い処を恐れる高所恐怖、ガン等の病気を恐れる疾病恐怖、よそのトイレに行けない不潔恐怖などがあります。また、上記の様な苦痛を緩和するためにアルコールを飲み続けアルコール依存症になる可能性もある。 強迫性障害の患者がアルコール依存になった場合、一日に一定量以上のアルコールを摂取しないと強迫現象が起こるため治療はさらに困難になります。
抑うつ神経症
気分が滅入り沈みがちで、悲哀感、罪悪感、劣等感が強く、悲観的で意欲が低下し、何事をするにもおっくうになり興味が無くなります。また抑うつ神経症はうつ病とは異なり、一日の中での気分の浮き沈みは無く、うつ病では自分を責める傾向がありますが、抑うつ神経症では他人を攻める傾向があります。
治療
治療はまずじっくりお話を聴く事からはじめます。そしてある程度お話を聞いた後は症状にアプローチします。神経症の症状の多くは胸と頭に熱がこもる事によって現れます。胸に熱がこもると、文字通り胸苦しくなり、息切れ、呼吸困難、咽のつまり感が現れます。そして胸に熱がこもる事によって心臓も熱を帯びますので、動悸が現れます。特に心臓神経症は心臓に熱がこもる事によって心臓から脳に危険信号が送られ、不安感、恐怖感、焦り感、イライラが現れます。頭に熱がこもると、その方の性格により、内向的な方はより内向的に、攻撃的な方はより攻撃的になり、思考がフル稼働します。頭がフル稼働してしまうと本能的に危険を感じ、思考を停止しようとします。それが意欲低下、行動抑制につながります。治療はその方の性格を考慮し、頭と胸が涼しくなるように手足のつぼを使いハリをします。