「花粉症もどき」とは

春本番を迎え、今年も花粉症に悩まされている方が多くみえます。
皆さんご存知の様に花粉症の症状は、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなどで、アレルゲンとなる花粉が多くあるところに行くと症状が発症します。
しかし、「花粉症もどき」は、アレルゲンとなる花粉が無くても花粉症と同じ様な症状をあらわします。
特に「朝起きた時から鼻水が止まらない」とか「目のかゆみはない」とか「抗アレルギー薬が効かない」とか言う方は要注意です。
「花粉症っぽい症状」が出るのが特徴です。  本物の花粉症はアレルゲンとなる花粉があると反応しますので「外に出ると急激に悪化する」など花粉にさらされると症状が悪化します。

検査もあてにならない!

 花粉症の検査はいくつかありますが、アレルギーを起こす物質を大まかに把握する事ができるだけで、陽性反応があらわれたからと言って、必ずしもアレルギーを起こすとは限りません。
しかも、スギ、ヒノキ、ブタクサなどに陽性反応が出る場合は対処の仕方もあるかも知れませんが、ハウスダストで陽性反応が出た場合は対処のしようがありません。
患者さんの中には、ネコをずっと飼っているのにネコアレルギーだけ陽性だった方も見えます。検査も指標にはなりますが陽性反応が出たからと言って必ずしも症状があるとは言えない様です。

「花粉症もどき」の症状

「花粉症もどき」の症状としては花粉症と同じ様な鼻の症状が出るのですが、目の痒みなどは有りません。
アレルゲンとなる花粉自体が無いと思われるところで鼻炎症状を表します。 朝、起床してから鼻がムズムズしだし、くしゃみを連発したり、オフィスで部屋を移動したり、フロアを移動すると鼻炎症状が出るなどです。
また他の花粉症の方は反応していないのに自分だけ鼻炎症状が出ている時もあやしいです。
問題なのは、検査で「ハウスダスト」や「ダニ」など、どこにでもあり得るアレルゲンに陽性反応が出ている場合です。
この場合は環境を客観視して埃っぽいとか、ダニが繁殖してそうな環境なのかを考え、本当にアレルギー反応を起こしているかを考える必要があります。

「花粉症もどき」の正体は何⁉︎

鼻炎症状が出るにも関わらずアレルギーが関係無いとすれば考えられるのは「身体の冷え」です。
ただ患者さんはあまりこの「冷え」を自覚していません。
本来くしゃみや鼻水は、身体が冷えた時に出ます。カゼの初期症状として寒気がすると、先ず、くしゃみが出ます。
その後、ウィルスの侵入を防ぐため鼻水が出ます。
この状態が続けば、やがてノドの痛みや発熱が現れ、本格的なカゼへ移行するのですが、「花粉もどき」の方は「本格的なカゼ」へ移行するまで行かず、「カゼっ気」で治ってしまい、身体に冷えを溜め込んでいるのです。
慢性的に冷えを溜め込むと、体質として低体温症の場合も有ります。
また、花粉症の方の多くは身体が冷えています。

漢方的な考え方

漢方医学では「くしゃみ」は身体を良くする現象と考えています。くしゃみをする事で身体を温め、ウイルスの侵入を防いでいる訳です。
そして冷えによる「花粉症もどき」になる原因として3つの要素が考えられます。

肺の作用

くしゃみは肺の反射作用ですが、漢方医学でも肺の作用と考えています。
しかし、漢方医学の肺の考え方は、もう少し範囲が広く、肺の持つ働きの一つに、体表面の温度管理も担っています。 肺の気が循環することによって冷えたところは温め、熱を持ったところは発汗して解熱させる作用があるのです。
背中を触ると冷たい人は肺の気の循環が悪い方です。
また、冷たい空気を吸うと肺が過敏に反応して、くしゃみ、鼻水が出やすくなります。

肝の作用

 漢方医学の肝は主に血液の循環を担っています。
肝が正常に働く事によって必要な所へ必要なだけ血流量を調節しています。
また、春は肝が一番活発に働く季節で、肝が正常に血流を送る事によって、暖かくなる春に活動的になる身体のサポートをしています。
春の風に当たり過ぎると血流が滞り、冷えている部分と、温かい部分の温度差が出来てしまいます。
また、春は寒暖の差が激しいため、さらに温度差を作ってしまい、肝の血流を統括する作用が落ちてしまいます。
朝方症状が激しい方、温度差で症状が悪化する方は、肝の作用が低下しているかも知れません。

水の作用

 水分代謝が悪く、身体がむくみやすい方に多いです。
このような方は、2種類のタイプに別れます。
・胃腸の弱い方
消化吸収が悪く、水分が胃腸に残ってしまい、いつも胃腸の調子が良くないです。
過労、ストレス、気候の変化などが重なると、すぐに胃腸がくたびれてしまい、食欲不振や膨満感があらわれます。
口が苦くなり舌の苔が多くなります。
胃腸が疲れると鼻炎症状が悪化する方に多いです。
・身体がむくみやすい方
水分の代謝が悪く、「むくみ」としてして残ってしまう方です。
水分量が多くなるとそれだけ体は冷えやすくなりますが、胃腸が丈夫なため、食べれてしまいます。
そのため、体が水肥り傾向になると、「寒がりで暑がり」になります。
少し空気が冷たいと、鼻水、くしゃみを連発しますが、暖房をかけると、すぐに暑くなってしまいます。
暑くなると汗をかいてしまうため、その汗で冷え、また寒くなり、鼻水、くしゃみが止まりません。

治 療

多くの方は、体質的な傾向から、環境的要因、不摂生などが重なり、冷えが慢性化し、血行不良を招き、「花粉症もどき」を発症しています。
治療としては、体を温める作用のあるツボを多く使います。
肺の作用が弱い方は体表面が温かくなるように治療します。
肝の作用の弱い方は、血行を良くする事を中心に治療します。
水の作用の弱い方は、水分適正な場所へ送れるように治療します。
また、体を温める為に重ね着をすると、残念な事に、体を温める機能がどんどん低下し、さらに寒がりになります。
その結果「毎年着るものが増える」と言う事になり、冷えはさらに悪化します。
体の中から代謝をあげる事が大切です。

清須市の鍼灸院で働く若先生より